常陸平氏誕生の発端は平将門の乱
良将の子・将門は一族の争いに勝利すると、常陸国府を攻略します。さらに下野国、上野国を占領して「新皇」を自称しました。
この謀叛に対し、朝廷は将門追討令を出します。このとき国香の子・貞盛(将門の従兄弟)は母方の叔父である藤原秀郷(ひでさと)の協力を得て、4千の兵を率いて将門を攻めます。そして、940(天慶3)年2月14日に辛島郡北山(坂東市辺田の北山稲荷周辺)で将門を討ち取ったのです。
常陸平氏の始まりは多気氏と呼ばれた維幹
この功により貞盛は常陸国に多くの所領を得て、弟・繁盛(しげもり)の子である維幹(これもと)を養子とし、常陸国の所領を相続させます。維幹は筑波郡多気(つくば市)を拠点とし、「多気(たけ)権太夫」と号したことから、彼の一族は「多気氏」と呼ばれます。これが常陸平氏の始まりです。
のちに維幹は常陸国の大掾職に任じられ、子孫が大掾職を世襲していったことから、維幹を祖とする常陸平氏は「大掾氏」と呼ばれました。
常陸大掾七流の鹿島氏
大掾氏から出た庶流は「常陸大掾七流」と呼ばれ、このうち鹿島郡鹿島郷に土着して鹿島の地頭となった鹿島氏は、鹿島神宮の祭礼に関与していきます。雷神(軍神)タケミカヅチを祀る鹿島神宮が律令体制下で常陸国の一宮(国内でもっとも社格が高いとされる神社)となったことの背景には、征夷の際に加護を得たいという思惑もあったと考えられます。
常陸平氏に対して常陸国北部を制した河内源氏
那珂川以北の常陸国北部に勢力を張ったのが河内源氏でした。河内源氏の源頼義(よりよし)・義家(よしいえ)の父子は前九年の役や後三年の役に出陣し、東国武士との関係を深め、東国に勢力を根づかせていきました。そして頼義の末子・義光(よしみつ)を初代(異説あり)とする義光流河内源氏が確立していきます。なお、常陸国久慈郡佐竹郷(常陸太田市稲木町周辺)を拠点としたことから「佐竹氏」を名乗るようになります。
このような経緯を経て、常陸国の南部には常陸平氏、北部には佐竹氏(常陸源氏)が割拠したのです。
甲斐源氏の発祥はひたちなか?
源義光の三男の義清(よしきよ)は、那珂郡武田郷(ひたちなか市武田)に所領を得ます。その嫡男・清光は、常陸平氏の大掾氏と郷の境界線を巡って争い、1130(大治5)年に告発され、甲斐国市河荘(山梨県市川三郷町付近)に配流されてしまいます。のち清光の孫・信光が源頼朝の挙兵に呼応して甲斐守護となります。やがて戦国時代になると、この甲斐武田氏から武田信玄が出るのでした。
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