常陸国の国府は石岡に置かれた
常陸国府跡は山王川と恋瀬川によって形成される石岡台地に位置しており、現在の石岡市立石岡小学校の敷地内にあります。石岡小学校の建て替え工事の際に発見され、その後の調査の結果、詳細が明らかになりました。
国府の位置が判明していない国もあるなか、常陸国府跡は7世紀から11世紀にかけての国衙(こくが)(現在の都道府県庁に相当)の変遷が確認でき、2010(平成22)年には国の史跡に指定されたのです。
常陸国国府の周辺
国府内の西端には国衙が配置され、北側には国分寺・国分尼寺や鉄器工房(鹿の子遺跡群)、南側には常陸国総社や郡立寺院(茨城廃寺跡)が置かれました。国府のなかでも重要な施設が集まるエリアを「国庁」といいます。国庁の四方は塀で囲まれ、内部には正殿・脇殿などの建物が左右対称に整然と配置されていました。
また、律令期には、都と各地方を結ぶ官道の整備が全国的に進められます。奈良からの道は、足柄(あしがら)峠(神奈川県南足柄市)を越えたあと、浦賀水道を渡って房総半島に上陸し、上総国府(千葉県市原市)を経由し、北上して下総国荒海駅家(あらみうまや)(千葉県成田市)から香取海(現在の霞ヶ浦)を渡ります。こうして常陸国に入るのが当時の東海道であり、常陸国はその東端に位置していました。
常陸国国府とつながる官道
官道には一定間隔で駅家が置かれ、駅家には交替用の馬が用意され、人や物資の往来が容易になりました。
茨城県域における代表的な官道としては、五万堀古道(ごまんぼりこどう)(笠間市仁古田)があります。五万堀古道は常陸国府から奥羽方面に向かう道路遺構であり、安侯(あご)駅家(笠間市安居)から涸沼川を渡った場所に位置します。道路の幅はおよそ10mで、それが300mにわたって続いています。近年の発掘調査では、8世紀前半につくられたことが判明しており、路面に残った轍の跡や、脆弱な箇所を補修していたことなどが確認されています。
常陸国国府とつながる五万堀古道
「五万堀」の名称は、のちに源義家が五万の兵を率いてこの道から奥州に向かったことに由来します。なお、安侯駅家の推定地である東平(ひがしだいら)遺跡からは、「騎兵長十」と書かれた墨書(ぼくしょ)土器が出土したり、版築基壇(はんちくきだん)という礎石建物跡(米蔵跡)が見つかったりしており、前線拠点たる国府から奥羽方面に向かう軍用路として活用されていた様子がうかがえます。この五万堀古道以外にも、常陸国と東山道を結ぶ道や、国府と香島を結ぶ道などがあったと想定されています。
古代の道路遺構と思われるものは全国に30カ所以上ありますが、このうち五万堀古道は側溝まで確認できた数少ないケースであり、希少な遺構といえるでしょう。
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