舟塚山古墳の特徴と時代背景
舟塚山古墳は、3段に土を盛った墳丘(ふんきゅう)(三段築成)と、周囲にめぐらされた周溝(しゅうこう)が特徴です。こうした特徴は、大仙陵(だいせんりょう)古墳、いわゆる仁徳天皇陵(にんとくてんのうりょう)(大阪府堺市)と共通しており、ヤマト王権とのつながりがあったことが推測されます。
そもそも前方後円墳という墳墓形式は、ヤマト王権が支配下地域や結びつきの強い地域に造営を許可したものであり、ヤマト王権が東国へと支配領域を拡大していった際に舟塚山古墳がつくられたと考えるのが妥当でしょう。常総地方は、蝦夷(えみし)の地・陸奥へと勢力を広げていく際の前線拠点となるため、ヤマト王権にとって重要だったのです。
舟塚山古墳に埋葬されていた人物とは
舟塚山古墳の造営時期は、墳形や出土する埴輪から、古墳時代中期の5世紀と推定されます。被葬者は特定されていませんが、茨城国造(くにのみやつこ)とするのが有力な説のようです。
8世紀に成立した『常陸国風土記』によると、乙巳(いっし)の変(645年)以前の常陸地方には、新治(にいはり)、筑波、茨城、那賀(なか)、久慈(くじ)、多珂(たか)の6国があったと記載されています。このうち涸沼川中流域および恋瀬川、園部川(そのべがわ)流域、霞ヶ浦沿岸を支配していたのは茨城国造(くにのみやつこ)で、年代と場所から、茨城国造・筑紫刀禰尊(つくしとねのみこと)の墓と推定されました。この地域一帯を治めた首長が、伸長してきたヤマト王権とのつながりを得て、この地に前方後円墳を築造したのでしょう。
舟塚山古墳に見る権力者の痕跡
古代の関東平野には、温暖化による海面上昇(縄文海進)の影響で海水が流入し、海岸線が深くまで入り込んでいました。霞ヶ浦や恋瀬川、那珂川、久慈川の水上交通の要所は、政治・経済・軍事の重要な拠点であり、強大な権力者の痕跡が多く見られます。恋瀬川と霞ヶ浦の結節点につくられた舟塚山古墳は、その典型です。
やがて律令制が導入されると、舟塚山古墳からほど近い場所に常陸国府が置かれたことからも、この地の重要度の高さがうかがえます。なお、茨城国造は世襲されていき、その後裔が壬生(みぶ)氏を名乗るようになります。
装飾古墳の代表例・虎塚古墳
装飾古墳とは、石室内部や石棺の内外面に絵画や彫刻を施したもののことを指します。5~6世紀に九州地方を中心につくられましたが、茨城県域にも18基と数多く確認されています。
その代表例といえるのが虎塚古墳(ひたちなか市)です。虎塚古墳は7世紀前半頃に造営された前方後円墳で、横穴式石室内部に保存状態の良好な装飾壁画が発見されました。装飾には赤色のベンガラ(酸化第二鉄)が用いられ、幾何学文様(三角文や渦文、環状文など)や武具(太刀や鞆など)、装飾品などが装飾壁画として描かれていました。
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