五浦海岸の地質と油田の可能性
炭酸塩コンクリーションは微生物起源とされ、五浦地域の炭酸塩コンクリーションからもシロウリガイ、ツキガイモドキ、キヌタレガイ、オウナガイなどの化石が多く見つかっています。これらは、太陽光が届かない深海底などで、海底から湧き出す熱水や冷湧水に含まれる硫化水素やメタンの化学エネルギーに依存する化学合成細菌と共生する二枚貝です。
いっぽう、五浦海岸の炭酸塩の炭素同位体組成が、海水に溶けている炭素とは違うことなどから、研究チームは炭酸塩コンクリーションに残留している微量のガスの成分などを分析。その結果、炭酸塩コンクリーションを構成するほとんどの炭素が、地下深部の熱によって生成した天然(メタン)ガスに由来していることを明らかにしました。約2000万〜1500万年前、日本列島が大陸から分離したとき、激しい地殻変動によって海底深くにあった油・ガス田に亀裂が入り、数万年にわたって天然ガスが断続的に漏れ出していたのだとされます。しかも、五浦海岸沖には今も油ガス田が存在する可能性があるのです。
五浦海岸周辺の地形
五浦海岸は、五浦半島突端の海食崖が続く南北およそ1.2㎞の岩石海岸です。五つの浦からなり、さまざまな形の奇岩・岩礁(炭酸塩コンクリーション)が分布しています。これらは、かつて海底にあった油ガス田から湧出した天然ガス由来と考えられています。
五浦海岸で見つかった巨大サメの化石
2006(平成18)年に大五浦の岩礁で、大きなサメの歯化石が見つかりました。化石を含む岩塊を採取し、クリーニング作業を行った結果、57個の歯や4個の脊椎骨が密集していました。
これはカルカロドン・メガロドン(ムカシオオホホジロザメ)というサメの化石で、約2300万〜150万年前にかけて生息し、最大で全長20mに達したと考えられています。カルカロドン・メガロドンの歯の化石が見つかったのは、1670万年前頃の地層で、その一部は上顎歯と下顎歯が交互に噛み合った状態であることが確認されています。このような同一個体の歯群の発見は、国内では3例目という貴重なものであり、とくに1個体が歯列を残した状態で化石化しているものは非常にめずらしいものです。
五浦海岸の北側で見つかったデスモスチルスの化石
1992(平成4)年、北茨城市平潟町長浜海岸でデスモスチルスの化石が発見されました。デスモスチルスとは、約1800万〜1300万年前に生息していた束柱類(そくちゅうるい)デスモスチルス科に属する哺乳類で、体長は3mほど。カバに似た姿をしていたと考えられています。海苔巻きを何本か束ねたような独特の臼歯をもち、北太平洋の海辺などで生息していた半海生動物ですが、四肢が外側に張り出していて、陸上での動きは鈍かったと見られます。化石の研究により、デスモスチルスは、ゾウなどの長鼻類やジュゴンなどの海牛類に近い仲間だろうと推測されています。
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・壁面の岩に海底火山の証!名瀑・袋田の滝が誕生するまで
・平磯海岸の恐竜時代の地層から、アンモナイトや国内初のサメ化石!
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