日立鉱山と日立市の発展
そんな折、赤沢銅山に目を付けたのが、藤田組の一員として秋田県の小坂鉱山の経営改善に尽力した久原房之助(くはらふさのすけ)です。久原は独立後、1905(明治38)年に銅山を買収し、日立鉱山と改称。1906(明治39)年からの5年間で、従業員は約400人から1300人、採掘粗鉱量は約1万トンから17万トン、銅生産量は約260トンから5670トンへと大発展を遂げます。その後、名称変更や組織再編を経て、1929(昭和4)年に日本鉱業を設立。1940(昭和15)年頃には業界第1位の銅生産量を誇るまでに成長しました。戦後も増産を重ねますが、やがて銅価格の低迷や資材の値上がりなどにより失速。1981(昭和56)年に閉山しています。
閉山となった日立鉱山ですが、開発前に5000人(日立村)ほどだった人口は、高度経済成長期には20万人(日立市)を突破。鉱山の機械修理部門から日立製作所が誕生するなど、日立鉱山は日立市を日本屈指の企業城下町へと成長させました。
日立鉱山の地層と発展の関係
鉱山発展は、当地に鉱床があってこそ成し遂げられたものです。阿武隈山地には白亜紀に形成された花崗岩などの深成岩(しんせいがん)が広範囲に分布するいっぽう、その南端、日立鉱山付近を含む日立市と常陸太田市の一帯には、日立古生層(こせいそう)と呼ばれる古生代カンブリア紀〜ペルム紀の非常に古い地層が分布しています。
日立古生層は下部(古いほう)からカンブリア紀の玉簾(たまだれ)層・赤沢(あかざわ)層、石炭紀の大雄院(だいおういん)層・大甕(おおみか)層、ペルム紀の鮎川(あゆかわ)層に分けられます。とくにカンブリア紀の地層は、日立火山深成複合岩体というひとつの地質体としてとらえられています。
いっぽうで日立古生層は、長く形成年代がはっきりしていませんでした。それが近年、日立古生層の変成ポーフィリー(花崗斑岩(かこうはんがん))に含まれるジルコンという鉱物粒子を調べたところ、それは約5億3000万〜5億年前という古生代カンブリア紀のものであると判明。ここに、日立古生層は日本最古の地層であることが明らかになったのです。
日立鉱山で採れる鉱石
日立鉱山の鉱石は、前出の赤沢層などの変成岩中に銅や鉄などの金属硫化物が塊状、または層状に結集したものであり、いうまでもなく日本最古の鉱石です。
なお、採掘されていた鉱石は、海底で噴出した熱水から金属硫化物が沈殿したもので、このような層状含銅硫化鉄鉱床はキースラガー型鉱床と呼ばれています。
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