トップ >  北海道・東北 > 宮城県 > 

仙台藩・伊達政宗がキリシタンに寛容だった理由

この地域で作られた鉄は仙台城の築城にも使われたほか、秀吉の命で大坂城に2400貫(9000㎏)を送っており、鉄は仙台藩の重要な産物となっていきました。

江戸幕府は1612(慶長17)年に直轄領で、2年後に全国でキリスト教禁教令を出しましたが、政宗はキリシタンには寛容だったため、弾圧が激しい西日本から多くの信徒や神父が領内の鉱山地帯に逃れてきたといいます。鉄砲や農具に使用する鉄を確保するため、製鉄を保護したかったという向きもあります。

さらに政宗は、1613(慶長18)年、領内でのキリスト教布教容認と引き換えにイスパニア(スペイン)との貿易を求めて、イスパニア国王とローマ教皇のもとに支倉常長ら遺欧使節団を派遣しています。

仙台藩でもキリスト教が禁止に

しかし、常長が帰国した1620(元和6)年には仙台領内でも禁教令が出され、1624(元和10)年2月、仙台の広瀬川でカルバリヨ神父ら9人が殉教しました。仙台大橋のたもとに立つ「仙台キリシタン殉教碑」には、この事実が記されています。

そして、1639(寛永16)年から翌年にかけては大籠(おおかご)(岩手県一関市藤沢町)や狼河(おいのかわら)原村(現・登米市)で大弾圧があり、数百人が殉教しました。

隠れキリシタンとして信仰を続けた炯屋の人々

炯屋で働く人々は、弾圧にも屈せず、隠れキリシタンとして信仰を続けましたが、亨保年間(1716~1736)には海無沢(かいなしさわ)で120人が仙台藩により処刑されました。遺体が老(おい)の沢、海無沢、朴(ほう)の沢の3カ所に経典とともに埋葬されたことから、これらの場所は三経塚(さんきょうづか)と呼ばれています。

現在では海無沢だけが原形をとどめていますが、1954(昭和29)年に古文書が発見されるまでは、この地が殉教の地であることは明るみに出ていませんでした。

三経塚のそばにある米川カトリック教会は、こうした背景を受けて献堂されたものです。内部では、宗門改帳や十字架石などの遺物が公開されています。

隠れキリシタンの里

隠れキリシタンの里
『仙台藩ものがたり』を元に作成

沿岸部と登米を結ぶ道中にある、山あいの集落。ここに多くのキリシタンが集まり、製鉄に従事していました。

仙台藩の隠れキリシタンの歴史を伝えるまつり

また、1973(昭和48)年8月には、大柄沢(おおがらさわ)キリシタン洞窟が発見されました。高さ1.3m、奥行10mほどの洞窟で、スペイン人神父・バラヤスが潜伏していた期間、この地域の信者のミサをあげるために造られたとされています。

1982(昭和57)年には、米川カトリック教会と信徒会が「経塚殉教祭」として野外ミサを行いました。その後、「米川キリシタンまつり」、「キリシタンの里まつり」と名前を変え、現在は毎年6月に開催されています。この地の隠れキリシタンの歴史や文化が垣間見られる行事となっています。

『宮城のトリセツ』好評発売中!

日本の各県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。宮城県の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

●地図で読み解く宮城の大地

・複雑な地形が美しい三陸と松島はどうやってできた?
・奈良の大仏のメッキには涌谷産の金が使われていた!
・県西部に連なる火山群と数々の温泉地の関係とは、荒れ狂う北上川が舟運路に!
・伊達政宗が始めた一大治水事業、暗渠化した四ツ谷用水をたどると見えてくる伊達政宗の町づくり
・「杜の都」の由来となった森はいったいどこにある?
・東京駅丸の内駅舎に使われた雄勝石をめぐる波乱のドラマ

などなど宮城のダイナミックな自然のポイントを解説。

●宮城に開かれた道の歴史

・東北中の人々が旅した奥州街道!その繁栄を支えた宿場の光と影
・険しい奥羽山脈を越えて宮城と山形を結んだ道の歴史
・海運時代の幕開けとともに活発化した阿武隈川の舟運とは?
・野蒜港計画とともに消えた幻の巨大運河ネットワーク構想
・東北新幹線が仙台駅前後で不自然に蛇行する理由とは?
・東京メトロより古い 日本初の地下路線があった仙石線

などなど、意外と知られていない宮城の交通トリビアを厳選してご紹介。

●宮城で動いた歴史の瞬間

・宮城の豊かさを伝える旧石器や縄文の遺跡が各地に!
・東北最大の雷神山古墳が示す仙台・名取の有力豪族
・東北支配の拠点となった陸奥国郡山官衙と多賀城
・藤原家三代秀衡が陸奥守に就任・宮城の地も藤原家の統治下に
・室町時代に権勢を誇った大崎氏・名生館の屋敷で伊達氏らが拝謁
・敵を寄せ付けぬ天然の要害 正宗の拠点・仙台城が完成
・伊達62万石を揺るがせた伊達騒動の顛末を追う
・元禄バブル崩壊で財政危機!5代吉村が改革に乗り出した
・飛行隊基地に陸軍駐屯所など軍都としても栄えた宮城県

などなど、興味深いネタに尽きない宮城の歴史。知れば知るほど宮城の歴史も面白い。

『宮城のトリセツ』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

記事をシェア

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!