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若宮丸の船員一行はロシアへ漂着
乗組員16人は奇跡的に全員無事だったものの、漂着直後に船頭が亡くなりました。その後、一行はナアツカ島に運ばれ、原住民やラッコ猟をしていたロシア人の助けを受けながら1年ほど過ごし、1795(寛政7)年5月にロシア本土へ送られました。
移動中、船が方向を間違えて北極海に向かったため、一行は氷山を目撃したといいます。その後、オホーツクからシベリアを横断してイルクーツクへ向かいましたが、この過程で1人が命を落としました。
若宮丸の船員とイルクーツクに滞在した漂流者
イルクーツクに到着した14人の中には、ロシア正教に改宗し、ロシアに帰化する者も出てきたため、帰化組4人と帰国希望組10人とに分かれて生活することになりました。滞在は8年に及び、途中、1人が亡くなっています。
同地には、大黒屋光太夫とともに漂流してロシアに入った伊勢の船乗り、新蔵と庄蔵がいたといいます。
若宮丸の船員の決断!ロシアに留まる者と日本を目指す者
事態が動いたのは1803(享和3)年4月。皇帝アレクサンドル1世に謁見するため、13人はサンクトペテルブルクに向かうこととなります。途中、病気により3人はイルクーツクに戻るなどしたため、10人がサンクトペテルブルクの地を踏みました。
ここで最終的な帰国の意思を確認され、津太夫、儀兵衛、太十郎、左平の4人が帰国を希望。残り6人はロシアに残ることになりましたが、善六は通訳として同船することとなりました。
ロシアには漂流民の送還と引き換えに、日本との通商交渉を有利に持ち込む目論見があったと考えられます。
若宮丸の船員は世界各国を経由してついに長崎港に到着
同年7月、5人を乗せた船は、サンクトペテルブルクを出発。コペンハーゲン(デンマーク)、ファルマス(イギリス)、テネリフェ島(スペイン領カナリア諸島)、サンタ・カタリーナ州(ブラジル)、南太平洋のマルケサス諸島、カムチャツカ半島を経て、1804(文化元)年9月に長崎港に到着しました。
若宮丸乗組員の旅路
11年の漂流生活のうち、9年ほどをロシアで過ごしています。サンクトペテルブルクで皇帝に謁見したのち、大西洋と太平洋を渡り帰国しました。
帰国してもしばらく故郷に帰れなかった4人
しかし、幕府とロシアとの交渉がスムーズに進まず、4人は長崎でしばらく足止めを食らいます。1805(文化2)年3月、ようやく日本側に引き渡されましたが、なかなか故郷には帰れず、最初に送られたのは、江戸の仙台藩上屋敷でした。
ここでは蘭学者の大槻玄沢(おおつきげんたく)と志村弘強(しむらひろゆき)から聞き取り調査を受けました。これはのちに『環海異聞』としてまとめられています。
環海異聞とは
若宮丸乗組員が漂流中に見聞きした物事や、出会った人々の姿が、色鮮やかな絵入りでまとめられています。当時のロシアの社会や風俗が垣間見られる興味深い資料です。
若宮丸の船員たちのその後
1806(文化3)年、4人は12年ぶりに故郷に戻りましたが、太十郎と儀兵衛はこの年のうちに亡くなりました。津太夫は1814(文化11)年に、左平は1829(文政12)年に亡くなっています。
ロシアに残った6人のその後は不明ですが、善六は露日辞典の編纂に携わり、通訳として活躍したといいます。
石巻市の禅昌寺(ぜんしょうじ)には、若宮丸乗組員のための供養碑が建っています。
この日本人初の世界一周は地元でもあまり知られていませんでしたが、「石巻若宮丸漂流民の会」が結成され、調査や情報発信が進められています。
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