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宮城の米を江戸へ安定供給することに成功した伊達吉村

時代は下って伊達騒動が起こり、吉村が五代藩主になると、藩が年貢以外の米を直接買い上げる買米制度を整えました。藩財政の立て直しを図る政策で、費用が調達できない時には家臣や農民・町人から借金をして買米を続け、米の売上から借金を返済しました。この結果、江戸に運ばれる仙台藩の米は増大し、最盛期には20万石になったといいます。

買米制のしくみ

買米制のしくみ

藩が余剰米を独占的・強制的に買い付けることで、税収アップと同様の効果が得られました。元手となる資金の調達は、上方や江戸の商人を頼ることも多くありました。

伊達吉村の政策が莫大な利益を生む

1732(享保17)年の記録には、近畿・中国・九州地方で稲作被害があり、江戸の米価が暴騰したため、仙台米は例年の倍以上出荷され、約50万両もの利益を上げたと記されています。

このころから、「江戸の消費米の3分の1は仙台米」という評判が立ったといいます。こうした吉村の政策は、時期を同じくして進められていた徳川吉宗の享保の改革と重ねられ、「仙台藩の享保の改革」と呼ばれました。

宮城の米は幾多の困難を乗り越えて全国的な知名度を得る

一方、仙台藩でも冷害やかんばつ、洪水などで不作の年も少なくありませんでした。飢饉の年には餓死者が多数出て、北上川などには水死体が流れたといいます。

このような困難も乗り越え、政宗が始めて吉村が広めた宮城の米は、現在も東京はもちろん、全国で食されています。宮城県では、1927(昭和2)年から米の開発を開始。古川農業試験場(大崎市)が中心地となり、1963(昭和38)年に「ササニシキ」、1991(平成3)年に「ひとめぼれ」、2018(平成30)年に「だて正夢」など、これまでに38品種が誕生しました。

東北初の世界農業遺産 大崎耕土

2017(平成29)年に世界農業遺産に認定された大崎耕土。大崎耕土とは、大崎市、色麻町、加美町、涌谷町、美里町の1市4町にまたがる水田農業地帯を指し、この地域で行われてきた伝統的な水管理の仕組みによる持続可能な農業が世界で評価されました。

「やませ」による冷害、洪水や渇水が頻発する厳しい自然環境に置かれてきた大崎耕土では、中世以降、取水堰や水路、ため池などを流域全体で整備するとともに水管理の体制を整えることで、水田農業を発展させてきました。

あわせて、洪水や冬の季節風から家を守るために植えられた屋敷林「居久根(いぐね)」は、独特の景観とともに、豊かな生物多様性を形成しています。地域では、豊穣を祈る農耕儀礼などの農文化も育まれました。

2019(平成31)年には、大崎地域産米のブランド認証が始まっています。

東北初の世界農業遺産 大崎耕土

米のほか、麦や大豆、伝統野菜なども生産されています。味噌や日本酒など、県内有数の発酵食品産地でもあり、県内で最も餅をよく食べる地域としても知られています。

宮城の米でつくられた日本酒

最後に、米どころならではの宮城の日本酒にも触れておきましょう。宮城の酒づくりの歴史は、1604(慶長9)年まで遡ります。酒を愛した政宗によって仙台藩の御用酒屋が設けられ、宮城の酒づくりが発展したと考えられています。

現在、宮城県酒造組合に加盟する酒蔵は25ありますが、ここで活躍している杜氏のほとんどは南部杜氏です。越後杜氏(新潟)、丹波杜氏(兵庫)と並んで日本三大杜氏にあげられ、「端麗辛口」を特徴としています。

特筆すべきは、1986(昭和61)年11月に行った「みやぎ・純米酒の県宣言」です。宮城生まれのササニシキ100%の純米酒造りを酒造組合全体で進め、特定名称酒が9割を占めるようになり、全国新酒鑑評会などで高い評価を受けています。

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●地図で読み解く宮城の大地

・複雑な地形が美しい三陸と松島はどうやってできた?
・奈良の大仏のメッキには涌谷産の金が使われていた!
・県西部に連なる火山群と数々の温泉地の関係とは、荒れ狂う北上川が舟運路に!
・伊達政宗が始めた一大治水事業、暗渠化した四ツ谷用水をたどると見えてくる伊達政宗の町づくり
・「杜の都」の由来となった森はいったいどこにある?
・東京駅丸の内駅舎に使われた雄勝石をめぐる波乱のドラマ

などなど宮城のダイナミックな自然のポイントを解説。

●宮城に開かれた道の歴史

・東北中の人々が旅した奥州街道!その繁栄を支えた宿場の光と影
・険しい奥羽山脈を越えて宮城と山形を結んだ道の歴史
・海運時代の幕開けとともに活発化した阿武隈川の舟運とは?
・野蒜港計画とともに消えた幻の巨大運河ネットワーク構想
・東北新幹線が仙台駅前後で不自然に蛇行する理由とは?
・東京メトロより古い 日本初の地下路線があった仙石線

などなど、意外と知られていない宮城の交通トリビアを厳選してご紹介。

●宮城で動いた歴史の瞬間

・宮城の豊かさを伝える旧石器や縄文の遺跡が各地に!
・東北最大の雷神山古墳が示す仙台・名取の有力豪族
・東北支配の拠点となった陸奥国郡山官衙と多賀城
・藤原家三代秀衡が陸奥守に就任・宮城の地も藤原家の統治下に
・室町時代に権勢を誇った大崎氏・名生館の屋敷で伊達氏らが拝謁
・敵を寄せ付けぬ天然の要害 正宗の拠点・仙台城が完成
・伊達62万石を揺るがせた伊達騒動の顛末を追う
・元禄バブル崩壊で財政危機!5代吉村が改革に乗り出した
・飛行隊基地に陸軍駐屯所など軍都としても栄えた宮城県

などなど、興味深いネタに尽きない宮城の歴史。知れば知るほど宮城の歴史も面白い。

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