【宮城県の自然災害②】大津波とリアス式海岸
海溝付近の海底で起こる地震は津波を引き起こします。東日本大震災でも、地震そのものよりも津波による被害が甚大でした。
特に、宮城県北部に分布するリアス海岸は、津波の被害が大きくなりやすい地形です。V字谷が沈んでできるリアス海岸は、湾の奥へ進むにしたがって急激に湾の幅が狭まり、水深も浅くなります。そのため、津波の高さも加速度的に上昇するのです。
東日本大震災では、石巻市鮎川(あゆかわ)で津波高8.6m以上、女川町で34.7mの遡上高(津波が陸上を這い上がった高さ)を記録しました。浸水域の人口に対する死者の割合は、リアス海岸で平野部の倍だといいます。
仙台平野に残る津波伝説
東日本大震災以前には、津波は三陸地方だけでなく仙台平野にも到来するという意識は薄かったかもしれません。しかし、津波伝承は仙台平野各地に残されており、過去にも津波に襲われた地域であることがわかります。
多賀城市八幡には「小佐治(こさじ)物語」という伝説があります。小佐治という娘が、津波の際に「末の松山」に避難して助かる話です。波が越えない「末の松山」は、決して起こらないことの例えとして数々の和歌に詠み込まれています。ほかにも、宮城野区の念仏田(ねんぶった)や七ヶ浜町の招又(まねぎまた)が、住民が津波から逃れた地といわれています。
津波伝説の残る寺社も多くあります。仙台市若林区の浪分(なみわけ)神社は、周辺を襲った津波が二つに分かれて引いていった地と伝わります。宮城野区の柳澤波切不動尊は、梅田川を遡上してきた津波が到達した最終地点だといいます。太白区の蛸薬師如来には、津波でその地にタコが付いた状態で打ち上げられたという観音像が祭られています。岩沼市の千貫(せんがん)神社には、舟で海に出ていた政宗の家臣が津波で流されてきて、松の枝にかかって助かったといいます。
脚色や創作があるにしても、伝承から得る教訓は多く、防災意識の向上に役立つでしょう。
【宮城県の自然災害③】大洪水が発生する河川
また、宮城は雨による水害も多い地域です。北上川、阿武隈川など長大な河川では、上流で降った雨が短時間で遠く離れた平野部まで達し、洪水を発生させます。
戦後まもない1947(昭和22)年のカスリン台風、1948(昭和23)年のアイオン台風は甚大な被害をもたらし、北上川の治水が包括的に見直されるきっかけとなりました。以後、改修が重ねられ、浸水被害は格段に減少しつつありました。
2019年に多発した洪水の原因と今後必要とされる防災対策
しかし、2019(令和元)年10月の台風19号では、堤防の決壊が相次ぎました。川の水が堤防を乗り越える「越水(えっすい)」の状態が長時間続き、堤体が破壊されたことが原因とみられます。特に阿武隈川では、台風が流域の広がりと平行に進んだことで水かさが増え続け、支流が本流へ流れ込めずに溢れかえる「バックウォーター現象」が起きた可能性が指摘されています。
気候変動も踏まえ、今後は被害想定の見直しやさらなる防災対策が必要になりそうです。
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・県西部に連なる火山群と数々の温泉地の関係とは、荒れ狂う北上川が舟運路に!
・伊達政宗が始めた一大治水事業、暗渠化した四ツ谷用水をたどると見えてくる伊達政宗の町づくり
・「杜の都」の由来となった森はいったいどこにある?
・東京駅丸の内駅舎に使われた雄勝石をめぐる波乱のドラマ
などなど宮城のダイナミックな自然のポイントを解説。
●宮城に開かれた道の歴史
・東北中の人々が旅した奥州街道!その繁栄を支えた宿場の光と影
・険しい奥羽山脈を越えて宮城と山形を結んだ道の歴史
・海運時代の幕開けとともに活発化した阿武隈川の舟運とは?
・野蒜港計画とともに消えた幻の巨大運河ネットワーク構想
・東北新幹線が仙台駅前後で不自然に蛇行する理由とは?
・東京メトロより古い 日本初の地下路線があった仙石線
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・伊達62万石を揺るがせた伊達騒動の顛末を追う
・元禄バブル崩壊で財政危機!5代吉村が改革に乗り出した
・飛行隊基地に陸軍駐屯所など軍都としても栄えた宮城県
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