目次
宮城県成立までの歴史②:百姓・士族ともに困窮を極める
伊達家臣団も同様です。幕末期の伊達領内には、2万5000人ほどの武士がいたといわれます。石高が3分の1になってしまった明治2年以降の仙台藩に、それだけの家臣を養える力はありません。
藩士はほとんどが帰農させられ、北海道に移住した者も多くいました。新しく県が置かれた旧領内では一揆や打ち壊しが多発し、百姓の暮らしも士族の暮らしも混乱・困窮を極めたといわれます。
宮城県成立までの歴史③:新政府の混乱
この当時は、伊達家が治める領地と新政府が治める領地が混在していました。新政府も混乱していたのでしょう。方針は猫の目のごとく変わり、県の名称や領域も毎年のように変わっています。
たとえば、伊達藩の登米郡は、1869(明治2)年に新政府直轄の登米県になっており、1871(明治4)年に県庁舎の建設が決まりました。その建物が完成したころには水沢県となり、登米県庁舎は水沢県庁舎となりました。その建物は、現在「水沢県庁記念館」(登米市)として一般に公開されています。
水沢県庁記念館
- 住所
- 宮城県登米市登米町寺池桜小路1
- 交通
- JR仙台駅から東日本急行とよま総合支所線とよま総合支所行きバスで1時間30分、とよま明治村下車すぐ
- 料金
- 入館料=大人200円、高校生150円、小・中学生100円/レンタサイクル(1回)=300円/(手帳持参で本人無料)
宮城県成立までの歴史④:廃藩置県によって混在していた藩や府などが一新
府や藩や県が混在する、こうした統治方式は、1871(明治4)年7月の廃藩置県で一新されました。すべての藩が廃され、新政府が統する県へと変わりました。仙台藩もこのとき、仙台県に変わりました。
日本はそれまで、各地の豪族や大名などが統治する自治政府の集まりでありましたが、このときから、中央集権国家としての日本ができあがりました。
廃藩置県直後の旧仙台藩内の県は角田県、仙台県、登米県、一関県、胆沢県、江刺県に分かれていました。同年11月には、それらが仙台県と一関県の二つに再編されました。さらに翌月には、一関県が水沢県へと名称を変えています。
登米県を例に挙げれば、県庁舎の建設決定から完成までの短期間に、登米県から一関県、水沢県へと変わったことになります。ほかの地域でも同様でした。行政の区割りと名の度重なる変更は、そこで暮らす住民に混乱をもたらすだけだったでしょう。
宮城県成立までの歴史⑤:宮城県の誕生
仙台県が宮城県と名称を変えたのは1872(明治5)年、現在とほぼ同じエリアになったのは、1876(明治9)年8月以降です。宇多郡は福島県に編入され、胆沢郡、江刺郡は岩手県に編入されました。
この県域が決まるまで、伊達藩の武士は大勢が命を失い、禄を失い、百姓や商人に姿を変えました。戊辰戦争から、およそ10年。旧仙台藩領は、宮城県、岩手県、福島県に分割され、ようやく新しい時代へと入っていきます。
仙台藩領分割から宮城県の成立
仙台藩の領地は大幅に減らされ、旧藩領の多くは他藩の転封地や新政府直轄の預地(あずかりち)とされました。新政府直轄の地域では、新しい統治体制や重税に反発した民衆による一揆や打ちこわしが多数発生しました。
1871(明治4)年の廃藩置県によって仙台藩の歴史は終結し、政府から派遣された官僚による支配が確立しました。翌年に「仙台県」から「宮城県」に改称され、隣県との分離統合を経て、1876(明治9)年に現在の県域がほぼ確定しました。
新政府の下で、仙台には重要な軍事施設や公的機関が置かれ、東北の中枢都市として発展していきます。
『宮城のトリセツ』好評発売中!
日本の各県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。宮城県の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!
●地図で読み解く宮城の大地
・複雑な地形が美しい三陸と松島はどうやってできた?
・奈良の大仏のメッキには涌谷産の金が使われていた!
・県西部に連なる火山群と数々の温泉地の関係とは、荒れ狂う北上川が舟運路に!
・伊達政宗が始めた一大治水事業、暗渠化した四ツ谷用水をたどると見えてくる伊達政宗の町づくり
・「杜の都」の由来となった森はいったいどこにある?
・東京駅丸の内駅舎に使われた雄勝石をめぐる波乱のドラマ
などなど宮城のダイナミックな自然のポイントを解説。
●宮城に開かれた道の歴史
・東北中の人々が旅した奥州街道!その繁栄を支えた宿場の光と影
・険しい奥羽山脈を越えて宮城と山形を結んだ道の歴史
・海運時代の幕開けとともに活発化した阿武隈川の舟運とは?
・野蒜港計画とともに消えた幻の巨大運河ネットワーク構想
・東北新幹線が仙台駅前後で不自然に蛇行する理由とは?
・東京メトロより古い 日本初の地下路線があった仙石線
などなど、意外と知られていない宮城の交通トリビアを厳選してご紹介。
●宮城で動いた歴史の瞬間
・宮城の豊かさを伝える旧石器や縄文の遺跡が各地に!
・東北最大の雷神山古墳が示す仙台・名取の有力豪族
・東北支配の拠点となった陸奥国郡山官衙と多賀城
・藤原家三代秀衡が陸奥守に就任・宮城の地も藤原家の統治下に
・室町時代に権勢を誇った大崎氏・名生館の屋敷で伊達氏らが拝謁
・敵を寄せ付けぬ天然の要害 正宗の拠点・仙台城が完成
・伊達62万石を揺るがせた伊達騒動の顛末を追う
・元禄バブル崩壊で財政危機!5代吉村が改革に乗り出した
・飛行隊基地に陸軍駐屯所など軍都としても栄えた宮城県
などなど、興味深いネタに尽きない宮城の歴史。知れば知るほど宮城の歴史も面白い。
『宮城のトリセツ』を購入するならこちら
※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!