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慶長遣欧使節たちがヨーロッパへ出発
やがて、太平洋を横断できる西洋型帆船が完成。サン・ファン・バウティスタ号と名付けられました。排水量は約500トン。
同船が、石巻・月ノ浦港を出帆したのは、1613(慶長18)年のことです。乗船していたのは、慶長遣欧使節・支倉常長(はせくらつねなが)ら180人余。伊達家の家臣だけでなく、10人ほどの幕臣のほか、宣教師ルイス・ソテロ、特派大使ビスカイノらも乗っていました。
慶長遣欧使節はマドリードを経てローマへ
1614(慶長19)年にはイスパニアの植民地であるノビスパニアのアカプルコ港に到着。その後、30人程度が選ばれ、イスパニアの船でヨーロッパに向かいました。イスパニアの首都・マドリードには、12月に到着しています。
翌年1月にはイスパニア国王・フェリペ三世に拝謁でき、常長は政宗の親書を手渡しました。それを機会に常長は洗礼を受け、キリスト教に改宗。11月には、ローマ法王・パウロ五世と謁見しています。すでに出航から2年を過ぎていました。
常長一行の礼儀作法と外交交渉の態度にローマ市民は感心し、市議会は満場一致で常長をローマの貴族と名誉市民に叙し、公民権を与えることを議決したのです。
慶長遣欧使節の苦労は実らず
その後、支倉常長は交易の許可を得るべくイスパニアへと向かいました。しかし、日本国内ではキリスト教弾圧が厳しくなっており、そうした情勢はすでにヨーロッパに伝わっていました。
結局、イスパニア国王は交易を望まず、常長の努力は実りませんでした。使節団はノビスパニア行きの艦船に乗り、その後、同地に迎えにきた伊達家家臣とともにルソンに向かいました。貿易のライバル出現を恐れたイスパニアにバウティスタ号を没収されてしまったため、2年の足どめののちに便船で帰国したといわれます。
慶長遣欧使節・支倉常長のその後
帰国してからの支倉常長の動向についてはよく知られていません。墓と伝わる場所もいくつかあり、晩年は不遇であったと思われます。
支倉常長がヨーロッパに行っている間に幕府の政策は大きく変わり、キリスト教を弾圧し、武器などの海外取引を制限していました。常長が仮に貿易の許可を得て帰ったとしても、実際の交易は難しかったでしょう。さらに、常長自身がキリスト教徒に改宗していたことも具合が悪いところでした。伊達政宗としても、彼の処遇には頭を痛めていたことでしょう。幕府の怒りを買えば、改易されることだってあったのです。
支倉常長は、よくて隠居または蟄居するしか、道がなかったのかもしれなません。不運の人でした。
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