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仙台城は地形を利用した天然の防壁を持っていた!
千代城があった青葉山は、広瀬川に面して約60mの断崖がそそり立ち、そのほかは山林に囲まれています。現在は、仙台城跡の南側から八木山橋(やぎやまばし)をわたって八木山方面に行けますが、当時は橋もなく、真下は竜の口渓谷です。
峰続きの西南には、深さ約14.5m、幅約47mの堀切が設けられました。城の石垣は西側と北側に、さらに登城路の途中に、防護を兼ねた石垣がいくつか設けられましたが、他の城に比べれば格段に少ないです。
そして、北側の一部のみが急坂となって、頂上へと至る道になっていました。その道を除いては、人馬を寄せ付けぬ地でした。天然の要害です。
仙台城に伊達政宗が天守を築かなかったのはなぜ?
仙台城本丸に天守は造られませんでした。徳川家康が警戒することを憚って造らなかったとも伝わりますが、東側の崖上に立てば城下を一望できたから、高層の建物を造る必要はないと判断したとも考えられています。
天守の代わりに築かれたのが、仙台城大広間です。千畳敷とも言われる広さを誇り、内部には藩主が住まう「上段の間」をはじめ、多くの部屋が設けられていました。安土桃山時代を象徴するような、絢爛豪華な障壁画などで飾られていたといわれます。
登城路の入口には、大手門と脇櫓(わきやぐら)がありました。それらは昭和初期に国宝に指定され、仙台城の象徴となっていましたが、1945(昭和20)年の仙台空襲で焼失。のちに隅櫓は再建されたものの、今もまだ大手門は再建されていません。
仙台城が完成したのは1602(慶長7)年。伊達政宗が入城したのは、1603(慶長8)年でした。
仙台城を完成させた伊達政宗は城下町の整備も進める
仙台城は掘割や石垣が少なく、天守も造られなかったから、普請の費用は少なく、期間も短く済んでいます。その代わり政宗は、町割りや寺社の建造に力を注いだといわれます。
城下町は、広瀬川を挟んで東側に築かれました。城近くの川沿いには重臣らの屋敷、大町付近には商家、門前町に寺社、それらを取り囲むように足軽長屋が配置されています。
伊達政宗が入城してから町割りがほぼ整うまで10年ほどもかかっているといわれます。しかしもちろん、その先も、陸奥守政宗が治めるにふさわしい大規模な城下町を目指して整備が続けられていくのです。
仙台城を離れた伊達政宗の晩年と平穏な世の訪れ
伊達政宗は晩年になると若林城を築いて、1636(寛永13)年までの8年間をそこで過ごしました。
政宗の死後、二代藩主・忠宗は登城路入口の奥に二の丸を築き、1639(寛永16)年に完成。幕末まで政務はそこで行われました。若林城は解体され、その建物も二の丸に移されました。
仙台城本丸は急峻な坂を登った青葉山の頂上にあるため、毎日の政務を行うには不向きだったのでしょう。二の丸の完成は、戦国の荒々しい世が去り、ようやく平穏な時代が訪れたことを感じさせます。
仙台城と若林城の立地
要害上に建てられた仙台城と、晩年の政宗が住んだ若林城。若林城下にも、新たに町がつくられました。
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