その頃、秩父の絹は、江戸だけでなく京阪地方でも評判となり一大産業となっていました。当時の秩父の中心地だった大宮郷では絹市が開かれており、この時代の夜祭はお蚕祭りとも呼ばれていたといいます。

屋台や笠鉾は、夜祭と合わせて開かれ、大勢の人たちでにぎわう絹市の路上にも曳き出されました。そして、路上で歌舞伎などを上演することで、絹市にたくさんの客を呼び込み、地域に経済的な繁栄をもたらしたといわれています。派手な屋台や笠鉾によって祭りを豪華絢爛にすることで、秩父夜祭がより多くの人たちに知られることになったというわけです。

秩父地方は寺社が多いのも特徴です。記録によれば、江戸時代には1300以上の寺社があったといいます。それらの寺社のなかで独特の佇まいを見せるのが、34カ所の観音霊場（秩父札所（ふだしょ））です。

秩父札所は西国（さいごく）33カ所、坂東（ばんどう）33カ所と合わせて、日本百観音霊場の一翼を担っています。秩父地方の小さなエリアに34カ所もの札所がつくられたのは、いささか不思議な気もしますが、武甲山を神体山（しんたいさん）とする古い信仰と観音信仰が融合して根づいてきたと思われます。

秩父札所が現在の形になったのは、日本百観音霊場に加わったのがきっかけです。百観音が成立したのは、戦国時代後期とする説もあれば、江戸時代に入ってからという説もあります。

秩父は、西国や板東の札所と比べて少ない日数で34カ所を巡れることや、関所がないことなどから、江戸時代には庶民層の人気を集め、江戸からたくさんの人々が巡礼に訪れていました。

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