名古屋港における国際貿易は、県内にも多大な恩恵を与えています。名古屋港管理組合の調査結果（2017年）によると、名古屋港が愛知県にもたらす経済波及効果は、年間で約32兆円（周辺全域では約48兆円）。これは県内生産額の約44％に相当し、県内の全就業者数のうち約３人に１人の雇用を創出している計算です。

これほどの経済波及効果には、名古屋港の広さが関係しています。４市１村にまたがる港湾は陸域が4288万㎡、水域が8167万㎡にも及びます。これは東京港と横浜港を合わせた面積よりも広いのです。

コンテナターミナルや石油基地、工業団地などを効率的に配置することで、国際的な競争力向上に努めてきました。近年では、IT活用によるターミナルの一元管理システムを導入するなど、その機能性はますます高まっています。

しかし、名古屋港が拡大する過程には困難も少なくありませんでした。

開港は1907（明治40）年ですが、構想から実現までに25年以上の時を要しました。1881（明治14）年、初代名古屋 区長の吉田禄在（よしだろくざい）は、明治政府に熱田港湾築 港を上申しましたが色よい返事は得られず、本格的な計画着手には至りませんでした。

1896（明治29）年、ようやく政府から工事の許可を受けましたが、このときも国庫からの補助は受けていません。何とか着工には至ったものの、日清戦争後の不況で県財政はひっ迫。資金不足で工事は遅々として進まなかったのです。

さらに、県民への税負担も増すばかりで、県民からは築港反対論、工事延期が叫ばれました。当初は、第１期工事で１～４号埋立地（現在の築地ふ頭、ガーデンふ頭、大手ふ頭）がほぼ完成するいっぽう、反対派の声も大きかったのです。

こうした県民意識を変えたのは、巡航博覧会船「ろせった丸」の存在が大きいのです。入港した3800トンもの大型船が、県民10数万人を魅了。名古屋港築港の意義が再認識され、反対運動は収束しました。

1906（明治39）年、愛知県知事の深野一三（ふかのいちぞう）は貿易港としての発展を目指し、政府に上申。翌年11月、ついに開港式を迎えました。

開港から戦後に至るまで、名古屋港は順調に拡大、発展を続けます。1920（大正9）年には初めて国庫からも補助が下りたことで、次々と拡張工事が施され、1942（昭和17）年には665万㎡もの巨大な港湾となりました。

戦後は沿岸部の工業化が進められ、石炭火力発電所や重工業地帯が形成されたことは周知のとおりです。

成長を続ける名古屋港でしたが、1959（昭和34）年、伊勢湾台風による高潮で開港以来の被害に直面します。高潮で港湾部の貯木場が崩壊。多くの人命が奪われ、港湾施設の機能は完全にマヒしたのです。

その後、名古屋港は、困難な復旧工事を確実に実現するとともに、大規模な防災計画を策定するなど災害に強い港湾づくりに腐心。その結果として名古屋港は、モノづくり名古屋（中京工業地帯）の玄関口として大いに発展したのです。

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●収録エリア
愛知県全域