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京浜工業地帯の始まり~明治末期の工場誘致による多摩川周辺地域の工業都市化~

この多摩川周辺の地域は、水陸両面での交通の便に恵まれ、かつ東京や横浜といった大消費地にも距離的に近いことから工場用地として注目されました。

明治末期、工場誘致に熱心な地元の有力地主らが安価で用地を提供し、短期間のうちに横浜(明治)製糖、東京電気を皮切りに、日本蓄音機商会、富士瓦斯紡績(ふじがすぼうせき)、日本電線工業、味の素などの工場が建設され、多摩川下流域から海岸にかけた一帯は工業都市化したのです。

京浜工業地帯の形成と浅野財閥による埋立事業の着手・拡大

また、かねてより臨海工業地帯建設を企図していた浅野財閥の浅野総一郎(あさのそういちろう)が、私費を投じて鶴見川河口付近の埋立事業に着手。 浅野は1912(明治45)3月に鶴見埋立組合を設立しました。

同組合は、1914(大正3)年に鶴見埋築株式会社、1920(大正9)年に東京湾埋立株式会社と改称するなかで埋立事業を拡大。1913(大正2)年からの15年ほどで約150万坪もの埋立地(浅野埋立)を完成させました。

同時に、1万トン級の大型船舶が停泊できる岸壁や鉄道、道路なども整備され、多摩川北岸の大森・蒲田地区から川崎、横浜へと続く京浜工業地帯が形成されていきました。

京浜工業地帯は軍需工場へと転換し大空襲での壊滅的打撃を受ける

しかし、神奈川県域は1923年の関東大震災で大きな被害を受け、そこに1930年の昭和恐慌や農村恐慌が重なり、都市部には失業者があふれかえりました。

折しも1931(昭和6)年、満州事変が勃発し、日本は15年戦争へ突入します。このとき県東部の工業地帯は軍需工場へと転換し、にわかに活況を呈すようになります。

かくして神奈川県域は軍事都市化していきますが、それゆえに米軍の標的とされ、太平洋戦争末期の1945(昭和20)年には川崎(4月15 日)、横浜(5月29日)と立て続けに大空襲に見舞われ、京浜工業地帯は焦土と化してしまうのでした。

京浜工業地帯の戦後の発展

戦後の市民生活は逼迫しましたが、1950(昭和25)年に起きた朝鮮戦争での特需ブームを契機とし、高度成長期に県下の工業地帯はめざましい発展を遂げます。臨海部では工業地帯の埋立が急速に進められ、大規模な発電所や石油化学コンビナートが建設されました。

急速な発展によって公害(川崎公害)が社会問題を引き起こしましたが、現在までに法規制や企業努力もあって、大気や水質は著しく改善されました。

戦争や公害など紆余曲折を経て、神奈川県下の京浜工業地帯は世界有数の工業地帯へと成長したのです。

鶴見川河口付近(川崎市)

鶴見川河口付近(川崎市)

埋立事業が始まる前は、鶴見川の右岸も左岸もいわゆる田舎。ただ遠浅の海が広がる地域でした。

鶴見川の河口域には鶴見臨港鉄道が1926年に開業、1928年頃には約175万坪の埋立地ができていました。

埋立地の完成当時、15万坪を確保した日本鋼管(JFEスチール)は今も扇島に健在。初代社長は浅野総一郎の娘婿・白石元治郎が務めました。

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