蒸気機関車12号は、1874（明治7）年に輸入されたもので、英国シャープ・スチュワート社製。じつに日本の鉄道が開業した1872（明治5）年の２年後に配置されたという機関車で、国鉄の前身、鉄道院の23号（のちの160形165号）として新橋～横浜間を走りました。1911（明治44）年に尾西鉄道（現・名鉄尾西線）に転出。12号となり、1957（昭和32）年まで使用されました。

まだ鉄道が「陸（おか）蒸気」と呼ばれていた頃の日本最古のＳＬのひとつであり、しかも動態で保存されているのは博物館明治村だけで、これにマッチ箱と呼ばれた木造の三等客車が連結され、乗車することができるのです。

客車も1908（明治41）年の天野工場製（ハフ11）、1912（明治45）年の新宮鉄道製（ハフ13・14）で、まさに明治時代の生き証人が保存運転されている趣。これは驚愕の一語です。

もう１両の蒸気機関車９号は、1912（明治45）年の米国ボールドウィン社製で、翌年より富士身延鉄道（ふじみのぶてつどう）（現・ＪＲ身延線）で運行された機関車です。日本鋼管鶴見製作所（現・JEFエンジニアリング鶴見事業所）に移籍したのち、1973（昭和48）年に明治村入りしました。

12号に比べれば若いですが、それでも製造から100年以上が経過した明治時代の車両であり、同時代の保存機関車は全国でも極めて少なく、12号同様に大変貴重な存在です。

日本の蒸気機関車の大半は「加熱式」と呼ばれ、ボイラーで発生した湿った蒸気を、再度、煙管で乾燥蒸気に加熱し効率を高めていますが、まだ加熱式が普及する以前の明治時代の機関車は、蒸気を直接シリンダに送る「飽和式」でした。この時代の飽和式機関車が今も運転しているのは驚きです。

蒸気機関車とともに動態保存されているのが京都市電の車両です。京都市電は、1895（明治28）年に京都電気鉄道により、日本で初めて営業運転を行った路面電車として知られます。明治村には京都電気鉄道が製造した狭軌１型（製造年不詳）が、創業時の姿に復元、運行されています。

屋根に設けられたトロリーポールという集電装置は、この時代の電車特有の装備で、ポールの先に滑車があり架線と接触させていました。電車が折り返す際は人力でポールの向きを変える必要があり、これも見学することができます。

鉄道博物館は近年各地に開設されていますが、博物館明治村は、半世紀以上も前から体験して学べる展示を続けています。文化的価値も非常に高く、ぜひ訪れてみたいものです。

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愛知県全域