県都・横浜なら、テレビドラマ『あぶない刑事（デカ）』シリーズ（1986年）が有名でしょう。主人公たちが所属する港署は横浜市中区にある設定で、再開発される以前の伊勢佐木町や関内などのようすが見てとれます。2016年には10年ぶりとなる劇場版シリーズ最新『さらば あぶない刑事』が公開されたことも記憶に新しいです。

横浜の再開発をテーマにした作品としては、『名探偵コナン 探偵たちの鎮レクイエム魂歌』（2006年）があります。作中では横浜に「ミラクルランド」というテーマパークが建設されており、「よこはまコスモワールド」や「八景島シーパラダイス」を思い起こさせる外観をしています。町名が「みなとみらい」に変更されたことが謎解きにかかわるところも、横浜を舞台にした本作ならではの要素です。

同じく「コナン」シリーズとしては『名探偵コナン 漆黒の追跡者（チェイサー）』（2009年）でも神奈川県の各地が舞台となります。作中では、１都３県にまたがる広域連続殺人事件が発生し、大磯パーキングエリア、横浜市磯子区の堀割川沿い、アネスト岩田ターンパイク箱根の早川料金所などが“現場”として登場します。

なお、『探偵たちの鎮魂歌』と『漆黒の追跡者』は、どちらも日本アカデミー賞の優秀アニメーション作品賞を受賞しています。

横浜と同様に作品舞台となることが多いの は鎌倉地域です。

2018年に黒木華主演で映画化された『ビブリア古書堂の事件手帖』は、 北鎌倉駅近くの古本屋の店主・栞子が、客がもち込んできた古書にまつわる謎を解決してい くミステリー作品。原作は三上延の同名小説 で、2013年には剛力彩芽主演でフジテレビ 系列の“月９”枠でドラマ化もされました。

鎌倉市に暮らす３姉妹が、父の死後に異母妹を引き取り、4人で同居生活をする『海街dialy』（2015年）は、吉田秋生の同名マンガが原作です。のちに『万引き家族』でカンヌ国際映画祭のパルム・ドール（最高賞）を受賞することになる是枝裕和が監督を務めており、４姉妹に綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの豪華キャストを起用したことが話題を呼びました。本作は日本アカデミー賞の最優秀作品賞を受賞しています。

鎌倉の江ノ電鎌倉高校前駅は『SLAMDUNK』の“聖地”と目されています。原作マンガの作品舞台は架空の「湘北」という地名ですが、アニメ版（1993年）のオープニングシーンに鎌倉高校前駅の風景が登場したことからファンのあいだで注目されるようになり、現在では遠く台湾から“聖地巡礼”に訪れる熱心なファンも少なくありません。

湘南地区では、中山美穂と織田裕二が出演した『波の数だけ抱きしめて』（1991年）を挙げます。作品の時代設定は1982年で、湘南に開局したミニFM局がモチーフとなっています。青春映画としてはもちろんのこと、往時の若者文化に思いを馳せることもできる作品といえるでしょう。

世界のキタノ”こと北野武監督作品３作目『あの夏、いちばん静かな海。』（1991年）は、 湯河原町の吉浜海岸でロケが行われました。聾唖 の青年がサーフィンに打ち込む青春映画で、 北野映画特有の青みがかった“キタノブルー” の原点ともいわれる作品です。