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三浦氏佐原流による三浦氏再興と水軍の拠点・新井城

宝治合戦の折、三浦氏の傍流ながら執権北条方に加担したのが佐原盛時(さわらもりとき)です。合戦終結後、盛時は三浦半島南部に勢力を築きます。この三浦氏佐原流が水軍の拠点としたのが、三浦半島南端の油壺に築かれた新井城(三浦市三崎町)です。

三浦氏佐原流は、1331年に足利尊氏が挙兵する(元弘(げんこう)の乱)と足利方に与して戦い、鎌倉幕府滅亡後は相模国や武蔵の国の地頭となりました。

室町時代中期は、鎌倉公方(かまくらくぼう)(室町幕府の関東統治のための出先機関)と対立。武蔵の国の扇谷上杉氏(おうぎがやつうえすぎし)の勢力下に入り、徐々に勢力を広げながら戦国大名化していきました。

三浦氏佐原流の天嶮の要害・新井城と伊勢氏との対立

1495年、伊豆の伊勢盛時(いせもりとき)(のちの北条早雲(ほうじょうそううん))が扇谷上杉氏の重臣・大森氏を追放し、小田原城を奪う事件が勃発しました。これ以降、扇谷上杉氏の傘下にある三浦氏は、伊勢氏と激しく対立していきます。

しかし、新興の伊勢氏の勢いはめざましく、三浦氏は徐々に押し込まれ、最終的には新井城に立て籠もって戦うことになりました。

新井城のある油壺は、小網代湾(こあじろわん)と油壺湾にはさまれた三角形の岬です。三方が断崖になっており、引橋(内の引橋、外の引橋)の橋を落としてしまえば陸路では侵入不可となる、まさに天嶮の要害です。

当主の三浦義同(みうらよしあつ)(道寸(どうすん))は、伊勢氏に包囲されながらも耐え続け、3年間にわたって籠城戦を展開しました。 しかし、頼みの綱である扇谷上杉氏からの援軍は伊勢軍に阻まれ、1516年に落城してしまいす。

その結果、義同は自刃、勇猛で「八十五人力の勇士」の異名をとった子の義意(よしおき)は討死し三浦氏佐原流は滅亡しました。この合戦で湾内の水面が血で染まり、まるで油を流したような状態であったことから「油壺」の地名がつけられたといわれています。

新井城の概略図

新井城の概略図
国土地理院標準地図(タイル)を基図に各種資料を元に作成

新井城は急峻な崖に立ち、三方を海に囲まれたうえに、かつては残る一方に堀切が割られ他者の侵入を拒みました。また、内の引橋から油壺マリンパーク(水族館)にかけてが新井城の主郭部にあたります。

三浦氏佐原流の滅亡とその後の三浦半島

かくして三浦半島は、後北条氏によって平定されます。のちに豊臣秀吉が後北条氏を滅ぼすと、新井城は廃城となりました。

その後、三浦半島は徳川家康の所領となり、江戸時代を迎えるのでした。

家康の外交顧問・三浦按針とは?

家康の外交顧問・三浦按針とは?
画像:PIXTA 長崎県平戸市にある三浦按針の墓

徳川家康の外交顧問となったのが、イングランド人航海士のウィリアム・アダムスです。

オランダ船デ・リーフデ号の乗組員だったアダムスは、1600年に豊後の臼杵(現在の大分県臼杵市)に漂着。家康に引見されたのち、相模国逸見村(横須賀市)に250石の領地を与えられて旗本に取り立てられました。また、領地の三浦郷にちなんで、三浦按針(みうらあんじん)という日本名の名乗りを与えられました。

現在、横須賀市西逸見町の塚山公園には三浦按針とその妻の供養塔が建てられており、安針塚の名で知られています。

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