尾張国での応仁の乱
愛知県域(尾張国・三河国)においても混乱が引き起こされました。この時代、尾張国の守護は幕府の三管領家(さんかんれいけ)のひとつの斯波(しば)氏であり、斯波義敏(よしとし)が惣領を務めていました。ところが、8代将軍・足利義政は義敏を廃し、渋川氏出身の義廉(よしかど)に斯波氏の惣領を継がせたのです。
追放された義敏は、幕府政所執事の伊勢貞親(いせさだちか)にはたらきかけ、どうにか家督に復帰したものの、この措置に対しては義廉の岳父・山名宗全が黙っていませんでした。山名宗全や斯波義廉が一戦をも辞さない覚悟で京に詰めかけると、将軍義政は再び意を翻して義廉を斯波氏の惣領に復しました。義敏は復帰からわずか10日ほどで、再び地位を追われてしまったのです。
尾張国での力を失った斯波氏
足利義政は銀閣寺(慈照寺、京都府京都市左京区)を建立したことで知られていますが、彼の優柔不断な態度によって諸国が翻弄されてしまいました。
その代表例ともいえるのがこの斯波氏の家督相続問題であり、以降、尾張国内は義敏派と義廉派に分裂して争うようになります。こうして斯波氏は力を失い、尾張守護の権威は形骸化していきました。
尾張国ではのちに織田信長が誕生する
尾張守護の斯波氏に代わって尾張国内で台頭したのが、守護代・織田家でした。この尾張守護代家の下、尾張は上四郡を織田伊勢守家(おだいせのかみけ)が、下四郡を織田大和守家(おだやまとのかみけ)が治める体制が築かれていきました。そして織田大和守家に仕える代官の織田弾正忠家(おだだんじょうのじょうけ)から、のちに織田信長が誕生します。
三河国での応仁の乱
いっぽうの三河国も応仁の乱に深く関与していました。
応仁の乱で最大の激戦といわれているのが相国寺(しょうこくじ)合戦(1467年10月3日~4日)です。相国寺は京都市上京区にある臨済宗の寺院で、京都五山に列せられる名刹です。応仁の乱では東軍(細川方)がこの地に陣を構えていました。
ところが、西軍(畠山義就(はたけやまよしひろ)、大内政弘(おおうちまさひろ)、一色義直(いっしきよしなお)らの猛攻を受けて相国寺は陥落してしまいます。事態を憂慮した東軍は、東条国氏(とうじょうくにうじ)(三河守護代)に相国寺奪還を命じるのでした。
三河国は応仁の乱における最大の激戦地
かつて三河の守護職は一色氏のものでしたが、一色氏の没落後、三河は細川氏の分国となっていました。ところが一色氏は義直の代に勢いを取り戻し、丹後と伊勢半国の守護となり、三河では渥美郡の地頭職を得て三河守護への復帰を画策していました。こうした動きは、三河守護・細川成之(ほそかわしげゆき)や守護代・東条国氏にとって看過できるものではありません。相国寺奪還を命じられた東条国氏は、西軍の一色義直に対し苛烈な攻撃を仕掛けました。つまり「応仁の乱における最大の激戦」は三河国での権力争い、もっといえば「私怨」によってもたらされたわけです。
結局、東条国氏の活躍もあって東軍は相国寺を奪還したものの、両陣営の消耗は激しく、これ以降は京での戦闘行為を避け、地方へ戦火が飛び火していきました。
三河国ではのちに徳川家康が誕生する
やがて三河では東条氏、松平氏、戸田氏が東軍に、水野氏が西軍について国内で争います。その松平氏からは、のちに松平元康(徳川家康)が出ることになります。
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