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神奈川の遺跡からみる弥生文化伝来と集落の形成

神奈川の遺跡からみる弥生文化伝来と集落の形成
約1500年前の歴史がある相模国の一宮「寒川神社」(高座郡寒川町)。神奈川県中央部を支配していた相武国造の宗社とされる

神奈川県域に弥生文化(稲作や弥生式土器など)が伝わってきたのは、弥生時代前期のことと考えられています。

ところが実際には、神奈川県域で水田遺跡は見つかっていません。そのため、県域において実際に水稲栽培がどのように行われていたかは不明ですが、県域各地の遺跡から炭化した米や農耕具などが出土していることから、関東近県のなかでは比較的早期から稲作が行われていたと推測されます。

とりわけ大塚遺跡(横浜市都筑区)では、完全な形で環濠集落(かんごうしゅうらく)(周囲に濠を巡らせた集落)が発見されており、弥生時代中期以降には中規模程度以上の集落が存在していたことを裏付けています。

神奈川の古墳とヤマト王権

やがて、相模川流域は相武国造(さがむのくにのみやつこ)、県西部に師長国造(しながのくにのみやつこ)が支配するようになり、鎌倉・三浦地方はヤマトタケルの子孫と称する鎌倉別(かまくらわけ)が支配するヤマト直轄領となりました。

逗子市桜山と三浦郡葉山町長柄(ながえ)の境にある長柄桜山古墳群は、古墳の形状や出土品から、ヤマト王権との関係性が深かったと見られています。

ヤマト王権は大化の改新(645年)などで中央集権化を推し進めていき、国造制は廃止され、701年には国郡里制(こくぐんりせい)が施行されます。

このとき横浜から川崎にかけての県東部には3郡(都筑郡(つづきぐん)、久良岐郡(くらきぐん)、橘樹郡(たちばなぐん))が置かれ、これらは武蔵国(むさしのくに)に編入されました。

そして県中部から西部にかけては相模国(さがみのくに)が成立し、8郡(足柄上郡(あしがらかみぐん)、足柄下郡(あしがらしもぐん)、余綾郡(よろぎぐん)、大住郡(おおすみぐん)、愛甲郡(あゆかわぐん)、高座郡(たかくらぐん)、鎌倉郡、御浦郡(みうらぐん))が設置されました。

【神奈川県の古墳】おもな古墳分布

【神奈川県の古墳】おもな古墳分布
『図説 神奈川県の歴史 上』(有 隣堂、1986年)ほか各種資料を 元に作成

前期古墳(3世紀末~4世紀後半)の代表例は、長柄桜山古墳群(逗子市・葉山町)、鶴見川流域の加瀬白山古墳群(川崎市幸区)、相模川流域の真土大塚山古墳(平塚市)。中期古墳(5世紀頃)には東日本最大級の古墳群・秋葉山古墳群(海老名市)や鶴見川流域の稲荷前古墳群(横浜市青葉区)、後期古墳(6世紀頃)には鶴見川流域の駒岡古墳群(横浜市鶴見区)や相模川流域の登山古墳(厚木市)などがあります。

【神奈川県の古墳】長柄桜山古墳群

【神奈川県の古墳】長柄桜山古墳群
国土地理院標準地図(タイル)を基図にして、逗子市の資料を元に作成

逗子市~葉山町にまたがる標高50~120mの丘陵にある、2基の巨大前方後円墳。古墳としての完成度は高く、被葬者はヤマト王権と関係が深かった人物と見られています。

神奈川の遺跡ともいえる存在の鶴岡八幡宮の創建

神奈川の遺跡ともいえる存在の鶴岡八幡宮の創建
平頼義によって京都の石清水八幡宮を勧請したことにより創建された鶴岡八幡宮

平安時代以降、関東の治安は乱れ、平忠常(たいらのただつね)の乱(1028~31年)を平定するために中央から源頼信(みなもとのよりのぶ)・頼義(よりよし)の父子が派遣されます。

乱の平定後、頼信は相模守となり、坂東武者を従えて主従関係を結ぶと、これが関東における河内源氏(かわちげんじ)の礎となりました。子の頼義は、石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)を鎌倉に勧請して鶴岡若宮(のちの鶴岡八幡宮)を創建。鎌倉は源氏ゆかりの地となったのです。

この源頼信・頼義の子孫から、のちに源頼朝(よりとも)が誕生することになるのでした。

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