鶴見線で見たい! 激レア貨物列車その1「石炭列車」
そのひとつが石炭列車です。扇町駅と高崎線の熊谷貨物ターミナル(埼玉県熊谷市)を経て、秩父鉄道の貨物駅である三ヶ尻駅(みかじりえき)(同)を結び、日曜日を除くほぼ毎日運転しています。
※石炭列車は、2020年3月に運行が廃止されています。
石炭列車の歴史と役割
石炭(運炭)列車は、かつて日本で石炭産業が栄えた頃、良質な炭鉱のある九州、北海道などを中心に採炭地からの石炭を輸送するため多くの列車が運転されていました。しかし、石油によるエネルギー革命、相次ぐ炭鉱の閉山で石炭列車は減少し、その大半は昭和時代に消滅しています。
現在、鶴見線で運転されているのは、三ヶ尻駅に隣接するセメント工場へ燃料用の石炭を運ぶもの。第2次オイルショックにより、石油に代わって1980(昭和55)年から輸入炭が、セメント製造工程である石灰石、粘土、鉄などを燃焼させるために用いられています。その原料を運ぶ仕事です。
鶴見線は国内で唯一残った石炭列車
石炭列車の運転は全国でも、この鶴見線の列車だけとなりました。過去の石炭列車は、いずれも専用の石炭車で組成されていましたが、現存の石炭列車はホッパ車、ホキ10000形が使われています。「石炭専用」の標記がある、黒い車体を連ねた編成は石炭こそ見えないですが重厚感は満点です。
鶴見線で見たい! 激レア貨物列車その2「米タン」
貴重な列車には、在日米軍のジェット燃料輸送列車もあります。安善駅(あんぜんえき)から延びるJRの専用線(旧・浜安善駅)の先にある米軍鶴見貯油施設と青梅線拝島駅を経て、米軍横田基地を結ぶタンク車の専用貨物列車で、通称「米タン」と呼ばれています。
米タンは不定期運転で、安善駅常備の米タンに使用されるタキ1000形タンク車には、「JP-8」という米軍が使用するジェット燃料の工業規格名が標記され、同駅構内にズラリと留置されています。鶴見貯油施設、横田基地へは、それぞれ米軍の専用線が敷かれ、治外法権の施設内にJR貨物のディーゼル機関車により乗り入れます。
運転日の安善駅では、鶴見貯油施設からの燃料積載列車、横田基地からの返空列車が到着し、それぞれ機関車を交換して入れ換え作業が行われます。駅構内は多数のタキ1000形、本線牽引の電気機関車、入れ換え用のディーゼル機関車で賑わい壮観です。
鶴見線の鶴見川河口左岸(現在):荷揚げされた石炭はセメント工場へ
輸入され荷揚げされた石炭は、扇町駅(地図右上)を経て埼玉県熊谷市のセメント工場まで運ばれています。安善駅からの支線の先には、米軍の貯油施設があり横田基地へジェット燃料を輸送。その西、海芝浦支線は東芝の工場内、関係者以外は降車できない海芝浦駅が終点で有名です。
鶴見線の鶴見川河口左岸(昭和20年)
昭和20年当時、扇町駅からは支線が数本延びていました。安善駅からの支線には、アメリカ・ロックフェラーのスタンダード石油、横浜で貿易業を営むサミュエル商会が1900年に設立したライジングサン石油(のちのシェル石油)が立地。西には芝浦製作所(東芝)への支線に加え、浅野財閥による浅野造船所へ延びる支線などもありました。
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