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品鶴線とともに開業した新鶴見操車場の興亡

新鶴見操車場は、大阪府の吹田(すいた)、愛知県の稲沢(いなざわ)操車場に並ぶ日本三大操車場のひとつに数えられていました。現在、貨物列車は貨物駅やターミナルなど2地点をコンテナ編成などが結ぶ「拠点間(直行)輸送」となっていますが、かつては「車扱(しゃあつかい)」と呼ばれ、貨車1両単位を荷主が扱い、全国の多数の駅に貨物列車を走らせる「ヤード輸送」が主力でした。

1日5000両の貨車が集まった最盛期

操車場は、行き先が異なる個別の貨車を方面別に仕分けし、列車を組成するための設備です。新鶴見操車場では、ハンプという人工の丘に貨車を機関車が押し上げ切り離し、重力任せに下る貨車を転線させて仕分けし、ブレーキをかけて連結し編成を組みました。このため、広大な敷地にたくさんの線路が敷かれ、最盛期には1日5000両もの貨車を操車したといわれています。

廃止された新鶴見操車場

1984(昭和59)年2月、非効率だったヤード輸送が廃止され拠点間(直行)輸送に切り替わると、新鶴見操車場も廃止されました。無用の長物と化した敷地は再開発され、宅地などに生まれ変わっています。

品鶴線は旅客路線に生まれ変わった

貨物列車も減少し、臨海部に敷設された東海道本線の貨物支線や武蔵野線へ列車がシフトしたこともあり、空いた品鶴線には、東海道本線で運転されていた横須賀線の列車を走らせることになりました。こうして、操車場廃止に先立つ1980(昭和55)年10月から運行を始めています。

品鶴線はのちに湘南新宿ライン、成田エクスプレスも走る旅客線として知られるようになり、2010(平成22)年3月には武蔵小杉駅も開業しました。さらに相模鉄道が西谷駅(にしたにえき)から新線を建設し、新設の羽沢横浜国大駅(はざわよこはまこくだいえき)を経て品鶴線に乗り入れ、JR線と直通運転を行う相鉄・JR直通線が2019(令和元)年11月に開業。相鉄線と恵比寿、渋谷、新宿が結ばれました。

品鶴線は貨物幹線のおもかげが残る鉄道線

旅客列車でますます賑わう品鶴線ですが、かつて新鶴見操車場のあった新川崎駅付近には、現在でもJR貨物の新鶴見機関区があります。

往時と比べ大幅に減少したものの、貨物列車もまだ多数運転されており、品鶴線が東海道本線の貨物幹線であることは不変。列車には風格さえ感じられます。

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