鎌倉の地形とプレート活動
その過程には、地球を覆うプレートの活動が関係しています。
日本列島の太平洋側の海底には、北上してきた海洋プレートが、日本列島が乗る大陸側のプレートにもぐり込む深い海底の谷「海溝」があります。
鎌倉に分布する地層は、約700万~200万年前に、この海溝よりも陸側の海底斜面に、陸から流れ込んだ土砂や火山噴出物が堆積してできたものです。この地層が、海洋プレートの強い圧力で陸側に押し付けられ、隆起したと考えられています。
鎌倉の地層の特徴
こうして形成された鎌倉の地層には、砂や泥に、火山灰や火山礫が混じった「凝灰質砂岩(ぎょうかいしつさがん)」や「凝灰質泥岩(でいがん)」が広く分布しています。このうち、侵食に強い硬い層が削り残され、長い時を経て天然の城壁になったのです。
山を切り開いてつくられた鎌倉の町では、ところどころに岩盤が露出しますが、わたしたちは数百万年前の地層を目にしていることになります。
この凝灰質砂岩は、いっぽうで、ほどよく軟らかく、加工しやすい性質もあわせもっています。そのため、古くから「鎌倉石」として切り出され、石段や石塀、敷石などに使われてきました。
また、岩壁を穿って墳墓とした「やぐら」が鎌倉に多いのも、土地(平地)が不足している地勢に加え、岩の削りやすさも影響したと考えられています。
鎌倉巡りの地質学
鎌倉には、おおまかに海側から山側に向かって三浦層群逗子層、三浦層群池子層、上総層群浦郷層と3つの地層が分布しています。
このうち鎌倉の山をつくり、鎌倉石が切り出されたのはおもに池子層と浦郷層です。ふたつの層は、逗子層が火山灰をほとんど含まないのに対し、火山噴出物を多く含むのが特徴。地層をよく見ると、砂や泥の層のあいだに、軽石のように穴が開いた小石状の火山礫が見られるところがあります。
池子層は、瑞泉寺の庭園や銭洗弁天のトンネルによく露出しています。また、浦郷層は侵食されにくいため、源氏山や鎌倉アルプスの最高地点である大平山、朝比奈切通など比較的標高の高い尾根筋を形成しています。
鎌倉は地形や地質を生かした町
山を借景にした谷戸の寺社や、摩耗して丸みをおびた鎌倉石の石段などには、いかにも鎌倉らしい風情があります。そんな風景も、この地ならではの地形や地質がもたらした鎌倉の魅力といえるでしょう。
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