丹沢山地の誕生
約1700万年前、南洋の海底で噴火を始めた丹沢は、北上するフィリピン海プレートに乗って徐々に北へと移動しました。フィリピン海プレートは、日本列島が乗っているユーラシアプレートと北米プレートの下にもぐり込んでいきますが、繰り返す噴火で大きな地塊になった丹沢は、もぐり込めずに本州に衝突。これは約600万年前のこととされています。
その根拠となる岩石や化石は、丹沢の各所で確認されています。たとえば、塔ノ岳から最高峰の蛭ヶ岳、西丹沢までを結ぶ主稜線は、約1600万~1300万年前に噴出した火山灰や火山礫が固まった岩石(凝灰岩や凝灰角礫岩)でできています。
丹沢山地の色別標高図とおもな登山道
丹沢山地の稜線は、おもに溶岩や火山灰、火山礫などの火山噴出物でできた岩石で形成されています。海中に噴出した「枕状溶岩」や火山灰が固結した凝灰岩が、熱や圧力によって変成した「緑色凝灰岩」も見られます。白線がおもな登山道を示しています。
枕状溶岩(まくらじょうようがん)
海底で噴出した溶岩が、水で急冷されたため枕を並べたような形になったもの。丹沢各所で見られる
火山由来の主稜線
丹沢山地を構成する地層のうち、凝灰岩や溶岩など火山噴出物が堆積したものを丹沢層群という。ヤビツ峠から塔ノ岳へ至る表尾根などは、約1600万~1300 万年前のそれで形成されている。
緑色凝灰岩(グリーンタフ)
丹沢には火山灰が固まってできた凝灰岩が多く分布。熱水などにより変質して緑色を帯びたものを緑色凝灰岩(グリーンタフ)という。
丹沢山地は衝突で隆起してできた!
丹沢火山島がかつて海底火山であった証拠としては、海底で火山が噴火したときにできる「枕状溶岩」が見られます。また、サンゴの化石やサンゴ礁に生息していた貝の化石も数多く発見されており、丹沢がかつて暖かい南の海にあったことがわかります。
さらに、約70万年前、丹沢と同様に南洋の火山であった伊豆半島が本州に衝突したことにより、丹沢山地は激しく隆起し、現在のような急峻な山容になったと考えられています。
このように、丹沢と伊豆が次々と衝突した痕跡は、断層として残されています。丹沢山地の衝突現場にできた代表的な断層が、藤野木-愛川構造線です。この断層は、ちょうどJR中央本線の相模湖駅から大月駅付近にかけて走っています。
丹沢山地は現在も隆起をし続けている
丹沢山地の南端にある大野山や高松山と、JR御殿場線のあいだには、神縄断層があります。これは、伊豆半島が衝突した際に生じた断層だと見られています。
フィリピン海プレートは、現在も年に5~6㎝ほど北へ移動しているとされ、つまり丹沢もその圧力を受けて隆起し続けていることになります。そう、丹沢は今もダイナミックな地殻変動のただ中にあるのです。
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