丸の内の歴史：荒廃と明治維新後の民間への払い下げ
安政元（1855）年の大地震による大火で甚大な被害を被ったうえ、明治維新を迎えて大名家が解体されると、丸の内は土地の意味がなくなってしまいます。焼け野原のような状態で一時は軍隊の兵舎や新政府の役所が建ったものの、市街化計画によってそれらは移転。政府は、市街化計画の資金捻出のために、この土地を民間に払い下げることを決めます。
荒れ果てた土地に出現した「一丁倫敦（ロンドン）」とは？
利用価値がないと、政府が判断した土地を半ば押しつけられる形で払い下げを受けたのは、三菱財閥の２代目総帥・岩崎彌之助でした。
「三菱ヶ原」と呼ばれた荒れ果てた土地に、明治27（1894）年、岩崎は、イギリス人建築家・ジョサイア・コンドルの設計による「三菱一号館」を建てます。さらに、一号館を起点として、次々と煉瓦造り、３階建てのオフィス棟を建設。
ロンドンのビルに似た煉瓦造り建築であったため、八重洲町通り（現在の馬場先通り）に出現した赤煉瓦のオフィス街は「一丁倫敦（ロンドン）」と呼ばれることとなりました。
丸の内の歴史：整備・開発が進んだ大正時代
大正３（1914）年に東京駅が開業すると、駅から皇居まで道路が整備され、一丁倫敦の北側エリアの開発が進んでいきます。アメリカで施工期間を短縮する工法が台頭していた時期だったため、鉄骨鉄筋コンクリート造のアメリカ式巨大オフィスビルが建造されることに。
まずは、大正７（1918）年に日比谷通り沿いに７階建ての「東京海上ビルディング」が完成。ビルディングという言葉が、建物の名称に使われた日本初の例です。大正12（1923）年２月には「丸ノ内ビルヂング（丸ビル）」、同年５月には、丸ビルの隣に「郵船ビルディング」が竣工します。ちなみに、丸ビルは、その大きさと升のような形から、ダムの貯水量などを表す際に「丸ビル○杯分」と例えるのに用いられるようになりました。
そして、アメリカ式のオフィスビル街ということで、このエリアの景観を一丁倫敦に対して「一丁紐育（ニューヨーク）」と呼ぶようになったのです。
現在も丸の内の象徴的存在の「丸ビル」
丸の内の歴史：現代の再開発と発展
それから、約１世紀。三菱グループの丸の内再開発によって、「一丁倫敦」を思い起こさせる、三菱一号館を改造した美術館など、煉瓦造りの味わいを生かした建物を造る一方で、高級ブランドなどの先端文化発信地としての発展も進められています。
現在は美術館として復元された「三菱一号館美術館」
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