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日比谷公園の歴史:建設は遅々として進まなかった
ところが、練兵場を移転させた後も、広い敷地は使い勝手がよいために、陸軍省はなかなか土地を手放さず、その結果、ようやく土地を明け渡すまでに5年ほどが過ぎ、遅々として進まない公園計画に世間から非難の声が上がるようになっていました。
日比谷公園の建設計画が難航した理由とは?
計画が次の段階に入っても、すんなりと運んだわけではありませんでした。公園の設計案が決まらずプロジェクトが難航したからです。
博物学者、造園技師、茶人など、さまざまな専門家が設計案を提案するも採用には到らず、東京駅の設計で知られる辰野金吾まで呼ばれましたが、結果は同じでした。
日比谷公園は大勢の識者から期待されたため、スケールがどんどん膨らんだのが原因でした。しかし、政府にはその夢を実現する資金がないため、結果的に求められたのは、見た目は洋風の意匠でありながら、巧みに和の趣を取り込んだ和洋折衷の公園。ところが、そのような公園は世界のどこにも存在しないわけです。
日比谷公園の歴史:設計案の決定!日本初の洋風近代式公園の誕生へ
結局、この難事業を引き受けることになったのは、ドイツへの留学経験がある林学博士の本多静六(せいろく)でした。
多摩川水源調査の仕事で東京市庁に出入りしていて辰野金吾の知遇を得た本多は、1週間かけて草案を作成。辰野の後押しもあって、本多は無理難題を何とかクリアし、設計案は決定しました。本多はこの仕事を機に「公園の父」と呼ばれるようになります。
日比谷公園の着工と開園
本多を中心に、西洋花壇や和風庭園など各方面の専門家が集まり、明治35(1902)年に着工した日比谷公園は、翌年に開園します。
予算的な都合で苗木が多かったため、当初は「緑が少なく、日当たりがよすぎて霍乱(かくらん)(日射病)を起こすのでは」として「霍乱公園」と呼ぶ者も。しかし、設計者側は承知の上であり、10年後、20年後の樹木の生長を見すえた設計であったのは間違いありません。
日比谷公園の歴史:開園直後から人気となったさまざまな施設
また、当初の日比谷公園は、人力車、広告看板、大道芸、行商などを禁止する反面、盆栽店としての植木屋、珈琲店、茶店、ミルクホールなどの出店を認めました。開園の年に、洋風喫茶店の松本楼と翌年、和風喫茶店の三橋亭が開店。さらに洋風レストランの麒麟亭、結婚式場の高柳亭が続々とオープンしてにぎわいました。
文化面では、野外音楽堂が設けられて一般市民が西洋音楽に触れるきっかけとなり、東京市立図書館ができて児童閲覧室にある英語の本が人気を博しました。
日比谷公園が歴史の舞台になった「日比谷焼打事件」
その一方で、開園翌年の明治37(1904)年に日露戦争が起きると、翌年9月、ポーツマス日露講和条約の内容に不満を抱いた市民が日比谷公園に集結する事件も起きました。
数万人の群衆は暴徒と化し、公園近くの内務大臣官邸や国民新聞社を襲撃。その後、警察派出所、電車や教会堂まで焼き打ちにして戒厳令が敷かれます。世にいう「日比谷焼打事件」ですが、明治の洋風近代化を象徴する場は、こうした歴史の舞台にもなったのです。
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