目次
安田講堂事件勃発までの経緯②:東大紛争が引き起こした
政府は一連の事態を看過できなくなり、12月29日に文科省が、東大当局に対して翌年1月15日までに学内を正常化できなければ入試を中止すると警告します。しかし、期日になっても東大は、安田講堂を本拠とする全共闘など約500人の学生に占拠され続けました。
翌16日、ついに加藤一郎総長代行がバリケード封鎖解除のため、正式に警視庁に学内出動を要請します。これを受け、ジュラルミンの大楯を携えた機動隊を中心とする約8500人が出動。18日午前7時、東大構内に突入し、約35時間に及ぶ安田講堂事件の幕が切って落とされました。
東京大学の周辺地図
第1・7機動隊は、農学部正門を通って、陸橋から本郷キャンパスに、第2~7、8機動隊は南側の龍岡門から、第3機動隊分遣隊が西側の池之端門から突入しました。周辺には日本大学や明治大学など、ほかにも多くの大学があります。
安田講堂事件での機動隊の攻撃
機動隊は1万発以上のガス弾を用意し、構内に入ると猛然とガス銃と放水による攻撃を開始。ガス銃といっても、催涙ガス入りの弾丸を火薬で発射する銃で、20m離れたベニヤ板を貫通させるほどの威力がありました。危険なため直接人を狙った水平射撃は禁止されていましたが、当日は学生に当てるために使用されており、相手が医学生でも容赦しませんでした。
一方、東大当局が心配していたのは、学生の火炎瓶や投石などによる反撃で、正門周辺の商店に迷惑がかかることと、国の指定重要文化財である旧前田侯爵邸の赤門が破損することでした。
安田講堂事件に中央大学生もデモで参戦
機動隊が東大構内の封鎖解除を行っていたころ、神田にあった中央大学生会館前で全都学生総決起集会が開かれ、約2000人の学生が集まっていました。学生たちは東大を目指してデモ行進を開始し、午後1時頃東大構内とは別に動員された機動隊と御茶ノ水駅付近で衝突。デモ隊が湯島やお茶の水の交番を占拠し、機動隊と一進一退の攻防を展開します。
しかし、東大構内の封鎖解除を終えた機動隊も、次々と神田、お茶の水方面へ転進し、デモの抑え込みに加わります。デモ隊は、午後8時すぎに本郷3丁目付近まで達するも、東大構内に入ることはできず、午後9時には解散しました。
安田講堂事件の終結
東大構内でも学生と機動隊の激しい闘いが続いていましたが、翌19日午後5時46分、“本丸”の安田講堂が陥落。時計台に掲げられていた赤旗が、日の丸に取り替えられます。逮捕者は600人を超え、負傷者は、警察官が重傷者31人を含む710人、学生側が重傷者1人を含む47人で、死者は1人もいませんでした。
事件後、安田講堂は一部を除いて使用されなくなりましたが、1991年3月28日に24年ぶりに卒業式の会場に使われています。
学生運動の歴史が残る安田講堂とは
安田財閥の安田善次郎の寄付によって、大正14(1925)年に竣工。正式名称は東京大学大講堂です。バリケードの跡などが残り、破壊された安田講堂は、8億円をかけて修復され、1996年に国の登録有形文化財に指定されました。
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