東京裁判でのアメリカの思惑
実は、その裏にはアメリカのある思惑がありました。アメリカ主導の戦後の世界運営のためには日本の安定が不可欠で、そのために天皇の訴追は避けるべきと考えていました。ソ連や中国、オランダが天皇の訴追を求めるのは必至で、そこから予期せぬ事態への発展を危惧したアメリカは、東京裁判をマッカーサーに排他的に仕切らせたのです。
制度上は外交当局である国務省が関与しない体裁をとり、ソ連が外交ルートでアメリカに注文をつけられないようにするという目論見でした。
天皇の訴追に関しては、実際に連合国間で意見が割れて紛糾。結果的に連合国が構成する極東委員会の決定で免除されました。
東京裁判の審理終了:スガモプリズンとA級・B級・C級戦犯
こうして進んだ東京裁判は、昭和23(1948)年4月16日にすべての審理を終えます。公判は370回にも及び、約2年を費やしました。この間、A級戦犯たちは、GHQに接収された豊島区の東京拘置所、通称スガモプリズンに収容され、刑執行までここで過ごしました。
なお、A級戦犯とは、連合国が定めた戦争犯罪のひとつで、侵略戦争の計画や準備、開始、遂行などを「平和に対する罪」として追及。B級戦犯は交戦規則逸脱などの「通例の戦争犯罪」、C級戦犯には虐待や奴隷化など「人道に対する罪」が適用されました。
B・C級戦犯の裁判は、横浜やフィリピン、シンガポール、中国、香港、ビルマ(現在のミャンマー)など国内外の軍事法廷で実施。5千人以上の日本人戦犯が裁かれ、900人以上が死刑判決を受けたとされます。
東京裁判の判決
東京裁判の判決は、昭和23(1948)年11 月12日に下され、病死などで審理から外れた3人を除く25人が有罪に。東條英機と廣田弘毅の元首相や軍人ら7人が絞首刑、16人が終身禁錮、禁錮20年が1人、同7年が1人となりました。
東京裁判には、制度面以外でもニュルンベルク裁判と異質だった点があります。それは被告人の知名度。ニュルンベルク裁判の被告人たちは、いずれも有名人で、アメリカでも戦前から知られていました。一方、東京裁判の被告人たちは、一部に中国から恨まれている者もいましたが、大半は対外的にまったくの無名でした。
スガモプリズンと処刑場
昭和20(1945)年11月1日に開所したスガモプリズンは、東京拘置所に加えて周囲の民家を強制的に立ち退かせて建てられ、その敷地面積は約12万6千㎡もありました。
7人のA級戦犯の絞首刑は、東京拘置所時代のものを使わず、アメリカ軍が同敷地内に特設した13階段の処刑場で執行。同日にここで、B・C級戦犯の死刑も執行されました。
東京裁判の処刑場跡地
死刑執行は、同年12月23日。処刑場入口の13号鉄扉は、のちに法務省に寄付され現在も保管されています。その後、スガモプリズンは日本に移管。残りのA級戦犯18人が昭和33(1958)年5月に釈放されると、東京拘置所が復元されました。
昭和46(1971)年には、東京拘置所が小菅に移転します。跡地はサンシャインシティとして再開発され、処刑場跡は東池袋中央公園になりました。その一角に「永久平和を願って」と刻まれた石碑が、静かにたたずんでいます。
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