目次
井伊直弼が窓口となった日米和親条約
安政元(1854)年、約束通りペリーは来航し、アメリカは強く開国を迫りました。このとき、幕府ははっきりとした意思統一ができていないまま、開国を求める気迫におされるように日米和親条約を結び、下田、箱館を開港しました。
井伊直弼とは
彦根藩主の14番目の子。学問・文武に励みました。兄たちの死により36歳で彦根藩主となり、44歳で幕府大老に就きます。
井伊直弼への政策批判者が処罰された安政の大獄
安政5(1858)年、幕府はアメリカ領事ハリスとの間に日米修好通商条約を締結しました。日本は天皇への説明がないままでの条約締結でした。しかも、このときの条約内容は日本に不利な不平等条約(治外法権と関税自主権)で、この問題は後々まで影響し明治政府の課題として残ることになります。
しかしこの時点では、別のことが問題となって幕府を揺るがしました。それは、条約締結について天皇の勅許のない調印であったことです。これに激しく反発したのが水戸藩を中心とする攘夷(じょうい)派です。
孝明天皇は水戸藩に対して幕府の政務活動について批判する「戊午(ぼご)の密勅」(秘密の命令)を出し、水戸藩から諸藩に広めるよう勅命を下しました。しかし、これには天皇が一大名に命令することは幕藩体制を否定するもので、政治体制を混乱させることになる、と幕府が反発。勅命に関わった人物を捕えると、武力による政権打倒計画のあることが露見します。
幕府は「戊午の密勅」に関係した者を厳しく処罰、井伊直弼の政策に批判的だった公卿、大名、幕臣、志士など100名以上を処罰しました。安政5(1858)年から翌年にかけて行われた安政の大獄です。過去に例を見ない大弾圧で、吉田松陰、橋本左内など7名を処刑しました。
井伊直弼に対する反感から暗殺計画へ
井伊直弼は孝明天皇に幕府が開国した意図を説明、天皇は「心中氷解」と記して条約調印を了解しました。
井伊直弼は水戸藩に渡った「戊午の密勅」を返納するように働きかけましたが、それは逆に水戸藩の若い藩士たちの反幕府感情を増長し、水戸藩の井伊直弼に対する反感は暗殺計画へと発展していきました。
井伊直弼が暗殺された桜田門外の変
安政7(1860)年3月3日、井伊直弼は江戸城に登城途中、桜田門近くで暗殺されました。桜田門外の変です。
襲ったのは、水戸藩士17人、薩摩藩士1人の18人。彦根藩の屋敷は江戸城桜田門から約500m離れているだけでした。井伊直弼を襲った18名のうち、闘死 1人、自刃4人、自首8人、のちに捕えられた者2人、逃げ延びた1人はのちに自刃、維新後まで生き延びた者2人でした。井伊直弼側は大老ほか8人が死亡し、生き残った護衛は全員が処罰され、重傷者は流罪、軽傷者は切腹、無傷の者は斬首となりました。
事件は幕府の権威の失墜を象徴するもので、幕末のテロ行為が続く始まりと捉えることができます。
井伊直弼が眠る豪徳寺
世田谷区にある豪徳寺が井伊家の菩提寺。直弼の墓、現場で死亡した8人を称えた「櫻田殉難八士之碑」があります。
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