成田新幹線は東京駅から東進。東京メトロ東西線に並行し、市川市原木付近から千葉ニュータウンを経由し、現在の成田スカイアクセスに近いルートで成田空港まで、最速30分で結ばれる予定でした。しかし、建設が始まる1970年代は新幹線公害が問題化しており、東西線沿線を中心に建設予定地の住民から猛反対され、工事がほとんどできなかったのです。

このため、運輸省（現・国土国交省）は1977（昭和52）年に在来線を活用した成田新高速鉄道の構想案を発表しますが、これも実現には至りませんでした。成田新幹線も工事が凍結され、1987（昭和62）年には正式に中止されてしまいました。

しかし、空港アクセスの不便さは変わらず、これを解決するため、ターミナルビル直下に眠ったままの成田新幹線駅と工事を未完成の線路にJR成田線、京成電鉄を接続させ、緊急に列車を乗り入れさせるべく整備が行われました。

こうして、1991（平成３）年３月より成田エクスプレス、スカイライナーなどが運行を開始。2010（平成22）年７月には成田スカイアクセス（京成成田空港線）が開業し、成田空港への鉄道線は一気に充実しました。

およそ完成していた駅ホームはもちろん、乗り入れには建設途上だった空港付近の高架橋やトンネルも活用されました。複線分の路盤には、線路幅の異なるJR、京成電鉄それぞれの単線の線路が敷かれ、途中に列車交換用の信号場が設けられました。高架橋は断続的で、なかでも成田スカイアクセスと成田線の分岐点であり、近くに新幹線用の成田総合車両基地を設ける予定だった成田市土屋（つちや） 付近は構造が大規模で、まるで要塞のようでさえあります。東北・上越新幹線など、この時代の新幹線は高架橋が頑丈につくられたこともあり、支柱は太く巨大なコンクリートの塊です。土屋付近は高架橋沿いに大型ショッピングセンターがあり、その迫力ある光景を近くで見ることもできます。

成田新幹線の遺構は、一部が在来線に転用され有効に使われているいっぽうで、頓挫した新幹線計画を雄弁に語っています。

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●収録エリア：千葉県全域