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大網駅の始まりは房総鉄道の路線開業
大網駅は1896(明治29)年1月、房総鉄道による蘇我~大網間の開業(2月には千葉へ延伸)に始まりました。当時の駅は、現在の東金線の東金側600mの場所にありました。
翌年4月、房総鉄道は一ノ宮(現・上総一ノ宮)に延伸開業しましたが、千葉方面から東金方面を向く配線のため、列車はスイッチバックを行わないと一ノ宮方面には進めませんでした。千葉駅同様に不便であり、SL列車は機関車の向きを転車台で変え、付け替えを行うなど効率が悪かったのです。
房総鉄道は、のちに東金線となる大網~東金間を1900(明治33)年6月に開業させ、国有化後の1911(明治44)年11月に成東まで全通しました。千葉~成東~大網経由ではスイッチバックが避けられますが、大きく迂回することになり、東金線もローカル線で設備も脆弱で、スイッチバックを廃止する根本策が不可欠でした。
大網駅に至る外房線の土気〜大網間は運転の難所
ところで、大網駅に至る外房線の土気(とけ)~大網間は丘陵地帯で、土気に向けて25パーミル(1㎞で25m)の急勾配がある最大の難所でした。SL列車が喘ぎ、全長354mの土気トンネルもあり、加えて、半径200mほどの急曲線が続いたのです。
このため、同区間を通過する上りSL列車には補助機関車も連結されました。土気トンネルは老朽化のため1954(昭和29)年に取り壊され、オープンカットによる深い切通(きりどおし)をSL列車が走ることになり、SLファンのあいだで名所となりました。
大網駅が現在地に移転
その後、1972(昭和47)年の外房線複線電化の際、線路が改良され、旧・土気トンネルの隘路は20パーミルに緩めた新線に切り替わり、同時に大網駅が現在地に移転。スイッチバックは廃止されました。
これによりV字形の配線ができあがったわけですが、旧駅から上総一ノ宮方面への線路は短絡線として残されました。
土気~大網間は新線になりましたが、貨物列車は変わらず負担になるので、迂回にはなりますが東金線経由で運転が行われました。しかし、貨物列車は1997(平成9)年に廃止され、不要となった短絡線も同時に廃線となったのです。
大網駅付近の今と昔
かつて、千葉方面からきた列車は、大網駅でスイッチバックをせずして上総一ノ宮方面へは南下できませんでした。現在は、外房線と東金線がきれいにV字形を描いて分岐しています。昔の地図と比べると、土気~大網間の線形が変わっていることもわかります。
旧・大網駅跡は見学可能
旧・大網駅は公園となり、腕木式(うでぎしき)信号機と記念碑が立てられています。上総一ノ宮方面への線路もカーブした状態で途切れたままになっていて、昔日を偲ばせます。
土気~大網間の旧線も廃線跡として残りますが、旧・土気トンネルの深い切通は、大量の土砂で埋められてしまいました。切通に架けられていた道路橋が土砂の上にかぶさるように残され、少々奇妙な光景になっています。
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