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【銚子の地層】愛宕山周辺に分布する愛宕山層群

銚子半島の最高地点は、南東部にある海抜73.6mの愛宕山で、周辺には愛宕山層群と呼ばれる約2億年前の地層が分布しています。また、愛宕山の南、外川漁港の西側にある犬岩(いぬいわ)や千騎ケ岩(せんがいわ)などの岩体のほか、深海底でプランクトンが堆積した北部の黒生(くろはい)海岸にかつて見られた「黒生チャート」も愛宕山層群に属します。

愛宕山層群の地層とは

愛宕山層群の地層は、海洋プレートが大陸側へ沈み込む際、海溝にたまった土砂とともに大陸側へ押し付けられ、剥ぎ取られた付加体(ふかたい)と見られます。露頭では、ブロック状に粉砕された岩体や砂岩と泥岩が複雑に入り込んだ岩体を見ることができます。

【銚子の地層】愛宕山層群の上部にある銚子層群

愛宕山層群の上部には、白亜紀前期の堆積物である銚子層群があります。これは黒生以南の海岸に露出する約1億3000万~1億年前の地層で、礫岩、砂岩、泥岩からなります。およそ南の地層ほど新しい積み重なりをしています。

銚子層群は恐竜時代の化石が多産

銚子層群は、アンモナイトやトリゴニアなど、恐竜時代の化石が多産することでも有名です。とくに犬吠埼(いぬぼうさき)は、浅海でのさまざまな堆積構造や太古の生物たちが生きていた跡(生痕化石)がよく観察できることから、2002(平成14)年3月、「犬吠埼の白亜紀浅海堆積物」として国の天然記念物に指定されています。

また、銚子層群の古くて硬い砂岩は、昔から銚子石として建材や砥石などに用いられてきました。

銚子層群を覆う中新世の地層

銚子層群を覆う中新世(新生代新第三紀)の地層には、火山由来の安山岩などからなる千人塚層、海成シルトの夫婦ケ鼻(めどがはな)層がわずかに分布します。前者は利根川河口域など、後者は夫婦ケ鼻(銚子ポートタワー下)付近で見ることができます。

【銚子の地層】南海岸線に続く海食崖

銚子の南の海岸線には、下総台地が海で削られた屏風ケ浦(びょうぶがうら)と呼ばれる海食崖(かいしょくがい)が約10㎞にわたり続きます。その断面には、最古が約300万年前の犬吠埼層群から香取層、関東ローム層までを観察できます。

銚子の地層とジオ巡り

屛風ケ浦

銚子市犬岩から旭市刑部岬まで約10㎞続く海食崖。下総台地を波が削ってできました。下から、灰白色の飯岡層(春日層)、黄褐色の香取層、赤色の関東ローム層と、断面で地層が観察できます。

断層

屏風ケ浦に走るY字形の断層。地殻変動により、三角形部分が下へ、両サイドは上へずれています。戦時中に掘られた防空壕跡の穴も見えます。

犬岩

付加体である銚子最古(約2億年)の岩体。長年の風化と侵食により、まるで耳を立てた犬のような形状をしているためこう呼ばれています。

千騎ケ岩

高さ約18m、周囲約400mの巨大な岩体。犬岩同様、砂岩・泥岩からなる愛宕山層群の岩体です。源義経が千騎の兵をもってたてこもったという伝説から命名されました。

長崎鼻

遠浅の海が広がる、銚子半島東海岸の最南端の岬。恐竜時代にできた砂岩・泥岩、約2000万年前に溶岩が固まってできた岩石、約500万年前の礫岩などが見られます。サメの歯やクジラ類などの化石を産します。

宝満

約2000万年前に火山活動で噴出した、安山岩の岩体。源義経が、この付近に隠れていたという伝説から「判官(ほうがん)」がなまって「ほうまん」になったといわれています。

砂岩泥岩互層

犬吠埼の海岸に発達した板状の地層、砂岩泥岩互層。出張っている白い岩石が「砂岩」で、凹んでいて黒い岩石が「泥岩」です。地殻変動により地層は傾いています。

犬吠埼灯台下の露頭

砂岩泥岩互層からなる、犬吠埼灯台下の白亜紀・銚子層群(犬吠埼層)の大露頭です。

生痕化石

犬吠埼灯台南側の露頭に見られる、海底に生活していた貝やゴカイなどの巣穴やフンの化石。一定期間、ここが穏やかな海底だったことを示唆しています。

蜂の巣構造

波や風が作用し、岩の表面が削られて蜂の巣状になったもの(タフォニ)。成因としてボーリングシェル(貝の一種が岩に開けた穴)などが考えられます。

ハンモック状斜交層理

犬吠埼層で見られる、嵐のときの大きな波や流れによって形成された堆積構造。ここが、大きなうねりが重なり合う浅海であったことを示唆しています。

海鹿島

海鹿島海水浴場付近では、恐竜時代の砂岩や小石が固まった礫岩が見られます。海鹿島には、銚子にゆかりのある国木田独歩の文学碑があり、それは露出した岩石をそのまま利用しています。

とんび岩

黒生海岸にある、白亜紀前期・銚子層群の岩体(海鹿島礫岩)。鳥のトビのくちばしに似た形をしていることから命名されました。

夫婦ケ鼻

中新世に深い海の底に堆積した地層(夫婦ケ鼻層)でできた小さな崖。かつてこの場所の南側に約1.5㎞にわたり、この地層の崖が続いていましたが、漁港の改修工事により、今では銚子ポートタワーのふもとにわずかに残るだけです。

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