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大阪の橋は流通の要だった運河の歴史とともに
また、商業の町であった大坂は、物資の運搬路として多くの運河が開削されました。しかし、市電・地下鉄の整備や自動車の増加、あるいは環境汚染を理由に埋め立て、もしくは暗渠化されています。
たとえば、1622年に開削された長堀川は、南北に流れる東横堀川から分流して西に延び、木津川に流れ込んでいました。現在は埋め立てられ、長堀通となっています。この長堀川に架かっていたのが心斎橋(しんさいばし)で、現在は石造の橋柱と欄干などが復元されています。
長堀川と交差していたのは、1600年に開削された西横堀川(にしよこぼりがわ)です。土佐堀川から道頓堀川に流れていた西横堀川は、材木船が行き交う活気のある川でしたが、阪神高速道路環状線の建設工事で1962年に埋め立てられました。
1400年以上前に開削された鼬川(いたちがわ)
大阪市内の多くの運河は江戸時代初期に開削されました。ですが、飛鳥時代に掘られたのが「鼬川」です。6世紀の終わりごろ、四天王寺建立における資材の運搬を目的として開削されたとされ、「イタチが掘り進めた」という伝説が名前の由来。
1878年に鼬川と近くを流れる難波新川を連結する工事の際、全長約12mのくり船(丸木舟)が発見されました。都市化によって汚染がひどくなり、1954年に全域が埋め立てられました。
大阪の「橋」が付く地名代表格「四つ橋」は四つの橋の総称
西横堀川と長堀川が交差した地点に「ロ」の字に架けられていた「上繋橋(かみつなぎばし)」「下繋橋(しもつなぎばし)」「炭屋橋(すみやばし)」「吉野屋橋(よしのやばし)」の総称が四つ橋です。
地下鉄の駅や道路の名称などに名前は残されていますが、交差点と駅名が四ツ橋なのに対し、かつての橋名および道路と地下鉄の路線名は四つ橋です。
大阪の橋と運河は都市開発によって姿を消す
西横堀川と木津川(きづがわ)をつないでいた堀江川(ほりえがわ)は、堀江新地の開発に伴って1698年に開削。太平洋戦争の大阪大空襲で多大な被害を受け、そのガレキ処理と都市再生の名目で1960年に埋め立てられています。
そして西淀川区にあった大野川も1971~72年にかけて姿を消した川です。埋め立て後は高速道路にされるはずでしたが、当時は公害の被害が深刻だったこともあり、地元住人の強い反対で中止となります。
川が埋め立てられた遠因の1つも、工業化による水質汚染でした。川の跡地は緑陰道路となり、環境保全のため自転車と歩行者の専用通路となっています。
大阪の橋の多さを表す「八百八橋」と川
淀川の水流を利用して縦横に開削された大阪の運河。絵地図で見れば、まさに「八百八橋」の様子が一目瞭然。その中でも有名な橋を、現在の写真とともに紹介しましょう。
浄正橋(じょうしょうばし)
国道2号となにわ筋の交差点を浄正橋交差点と呼びますが、橋は100mほど南下した場所を流れていた蜆川に架かっていました。上天神南交差点の西側には「浄正橋跡」の碑がひっそりとたたずんでいます。
信濃橋(しなのばし)
四ツ橋筋と本町通が交わる信濃橋交差点の東側。西横堀川を埋め立てて建設された阪神高速道路の下がかつての信濃橋です。現在は親柱だけが残され、その横には顕彰碑が立てられています。
天満橋(てんまばし)
難波橋、天神橋とともに、浪華三大橋と呼ばれています。現在の北区(天満橋筋)と中央区(谷町筋)を結びんでいます。1885年の淀川大洪水で流出したのち、鉄橋が架けられた。現在は上下階式の橋梁となっており、地下には谷町線が通っています。
日本橋(にっぽんばし)
道頓堀川に架かっている橋。江戸時代、東京の日本橋(にほんばし)のほうが少し前につくられたが、「日本」の名称が使われたのは大阪の日本橋のほうが早いのです。現在の橋は1969年に架けられたもの。近くには古い橋の親柱が残っています。
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大阪の歴史は水を起源とするとされる理由
大阪府の属する関西・近畿・畿内の違い
こんなに違った古代の大阪! 消えた河内湾と河内湖 ほか
Part.2:大阪を駆ける充実の交通網
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どの道路が、なぜ混むのか?大阪の道路網の現状
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Part.3:大阪の歴史を深読み!
幕府軍が落とせなかった千早赤坂城の秘密
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Part.4:大阪で生まれた産業や文化
ダイハツ、パナソニック・・企業城下町の今
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<コラム>
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