目次
【淀川の歴史】かつては都への航路だった
古来、淀川は内陸部にある都と瀬戸内海を結ぶ交通路として活用されてきました。とくに都が京に移されてからは、大坂から京へ運ぶ唯一の航路として重要視されます。平安時代後期にさかんとなった熊野詣(くまのもうで)では、京から淀川を下って八軒家浜(はちけんやはま)から熊野街道を通り熊野三山へ向かっています。
淀川の往来を支える開発
江戸時代初期には、大坂と伏見をつなぐ旅客専用の三十石船(さんじっこくぶね)が登場。最盛期には上りと下りを合わせて1日320便、およそ9000人が往来しました。
明治時代に入ると蒸気機関を備えた外輪船が導入されるも、淀川の水深は浅く、蒸気船が航行できません。そこで「粗朶沈床工法(そだちんしょうこうほう)」で河川中央の流れを速くし、土砂をたまりにくくして水深を保つことを可能にしたのです。
この工法で用いられた「水制(すいせい)」によって誕生したのがワンドでした。水制に囲まれたところに土砂がたまり、その上に木や草が茂ったワンドは流れも穏やかで、魚にとって絶好の棲み処となります。このようなワンドは淀川に数十カ所もあるとされています。
【淀川の歴史】洪水によって悩まされた人々
暮らしに役立ついっぽうで、淀川は洪水で人を悩ませています。淀川における治水の歴史は古く、古代の「茨田堤(まんだのつつみ)」にはじまり、1594年には豊臣秀吉が宇治川の付け替え工事を行い総延長約12㎞の「太閤堤(たいこうつつみ)」を築造。同じころ、淀川左岸に枚方から長柄(ながら)(現・大阪市北区内)に至る全長約27㎞の「文禄堤(ぶんろくつつみ)」を築きます。
淀川の改修と治水工事の実施
1684年には幕府が河村瑞賢(かわむらずいけん)に命じて淀川の改修に着手。淀川の河口にあった九条島(くじょうじま)を開削して安治川(あじがわ)をつくり、流れを直線的にして氾濫を減少させました。
しかし1885年、発達した低気圧の来襲で未曾有の大洪水が発生し淀川の堤防は次々に決壊。被災人口約30万人という甚大な被害となります。この水害をきっかけに淀川改修の気運が高まり、1896年から1910年にかけて大規模な改良(治水)工事が実施されました。
【淀川の歴史】現在の淀川の誕生
工事前の淀川は川幅が狭くて蛇行しており、しかも河口は大川(おおかわ)、中津川(なかつがわ)、神崎川に分流していました。そこで、都心部を離れた北側に放水路を開削。こうして整備された守口から大阪湾まで約16kmの新しい川が、現在の淀川(通称「新淀川」)なのです。
改良工事後の淀川と新淀川
現在、一般的に淀川とは、大阪と京都の府境近くで木津川、桂川、宇治川が合流したところから、大阪湾に至るまでの流れをいいます。
【淀川の歴史】ヨシ原を残す鵜殿(うどの)と最古の堤防である茨田堤
宅地開発などで日本から消えつつある、ヨシが群生するヨシ原を今も残しているのが「鵜殿」です。高槻市の淀川右岸にある鵜殿は全長約2.5㎞、総面積約75ha。広さは甲子園球場18個分に相当します。
そんな巨大ヨシ原がある淀川には、日本最古の堤防が存在しました。仁徳天皇が築堤したと『日本書紀』に記されている「茨田堤」です。茨田堤には人柱を捧げた伝説も残っていますが、奈良時代に決壊しており、現在は記念碑が残るのみです。
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