梅田地下街がダンジョン化した理由
1874年、大阪~神戸間に鉄道が開通しました。初代の大阪駅は、現在よりやや西側にありました。当初は堂島につくられる予定でしたが、住民の反対で梅田になったといわれています。
官営鉄道(のちの国鉄、現・JR)は1901年、現在地に2代目の大阪駅の駅舎とホームを設けました。ところが、大阪駅は線路の関係で市街地に対して斜めに建設せざるを得なかったのです。それに伴って地上の東西南北に沿った街路も大阪駅に向けて放射線状につけ足されていき、その下に地下街が整備されていきました。
その結果、分岐の多い迷路のようになったのです。つまり、地下よりも地上の街路整備に原因があったのでした。しかも、複数の地下街ができることを想定していなかったため、継ぎ足しで広がってダンジョン化したのです。
※ダンジョン…本来の意味は「地下牢」。ゲームなどでは「地下迷宮」の意味で使われます。
2度も高架化された阪急の大阪梅田駅
阪急電車の梅田駅は1910年、現在の「阪急うめだ本店」あたりの地上に建設されました。当初は路面電車でしたが、増え続ける乗客への対応と高速化の実現のため、1926年に高架化と複々線化を実施しました。
その後、大阪駅が高架化されることになり、官営鉄道の線路と阪急の線路とがぶつかってしまうという大きな問題が生じました。阪急は1934年、線路を地上に置き換えました。梅田駅はふたたび地上駅となりましたが、旅客が増加し手狭になります。
次に阪急は官営鉄道の北側に新たな梅田駅を建設しました。この駅は官営鉄道の下を通るため地下駅でした。ところが、十三駅から梅田駅まで高架線であったことから、高架駅に戻すことを計画し、1973年に移転開設しました。これが現在の阪急大阪梅田駅です。
梅田地下街の迷路のような構造
さらに地下街の出口のほとんどがビルの地下と連絡しており、地上の歩道に出られないような構造になっています。地下はどこからでも見える巨大な目印が少ないため、自分がいる場所がわかりにくくなるのです。
また、坂があるせいで、地下1階を歩いていても知らないうちに地下2階や3階に下りていることもあります。
このような構造上の問題に加え、頻繁に増改築や店舗のリニューアルが行われてきました。そのため「以前は通行できた通路がなくなっていた」「景色が変わったので迷った」というケースも少なくありません。「梅田の地下街を歩けたら一人前の大阪人」といわれていますが、あながち大げさな表現ではないのです。
大阪駅(梅田)周辺の地下街
2023年にJR大阪駅の北に、地下駅が誕生します。この駅名は大阪駅で、これまでの大阪駅がさらに拡張する意味合いです。地下街がさらに広がり、ダンジョンの攻略難易度はますます上がるでしょう。
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