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江戸時代の大阪の埋立地工事

1615年に「大坂の陣」が終結すると、大坂は江戸幕府の直轄領として復興事業が進められました。幕府は豊臣時代の町割を流用した復興と都市発展に従事し、そうした商業振興と同時に治水工事も進み、大和川の付け替え工事などで出た大量の土砂も埋立地工事に利用されました。

現代の大阪の原型が埋め立てによってつくられる

工事のあった元禄年間(1688~1704年)は幕府が新田開発を奨励しており、河川や沿岸部に新たな田畑をつくろうとしました。

開墾はおもに有力町人が請け負い、大阪湾岸部から広範囲に広がる「川口新田(かわぐちしんでん)」に至っては1854年まで埋め立てが続けられました。この川口新田跡地に相当するのが、今の此花区(このはなく) 、港区、大正区の大部分と、住之江区、西区、西淀川区、浪速区(なにわく)、西成区(にしなりく) の一部分です。

造成された新田の面積は、湾港部の土地を除けば大阪市の約3分の1にあたるといわれ、まさに現在の大阪の原型は、江戸時代の埋立地で造成されたといっても過言ではありません。

大阪の埋立地工事と大阪港の開港

そんな大阪の湾岸部は水運の拠点としても用いられ、川口・安治川口(あじがわくち)周辺は日本各地から船舶が集まる大阪海運の玄関口でもありました。

しかし水深の浅い川口に大型船は入港できず、幕末の開国後は急速に衰退。1898年より、淀川改良に並行する形で港湾機能の拡充を目指した「大阪港第一次修繕工事」がはじまり、大阪港の開港となります。

大阪港で続く埋め立て工事

大阪市の主導で進められた工事により、1903年には「築港大桟橋(ちくこうだいさんばし)」が完成。これによって大阪港にも大型船舶の停泊が可能となります。

その後、入港数の激増によって南港、北港の建設を目指す「大阪港第二次修築工事」が1928年から開始。1939年には取り扱いの貨物数で日本一を記録しましたが、太平洋戦争の勃発で工事は北港の完成で中止され、南港の埋め立てが完了したのは1980年でした。

大阪港の現在の様子とその後の埋立地工事

現在の大阪港には貨物用の埠頭や客船ターミナルが置かれ、関西における工業・商業港として利用されています。

また、通常の埋め立て事業も続けられ、舞洲(まいしま)や夢洲(ゆめしま)、関西国際空港など、昭和以後につくられた人工島も数多いのです。

現在の大阪港

現在の大阪港
国土地理院標準地図を元に作成

大正時代から重化学工場地帯として発展した北港に対し、南港のほとんどは戦後に行われた埋め立て造成によって完成。2001年には北港の遊休地にユニバーサル・スタジオ・ジャパンが開園しました。

大阪北港に造成された人工島の舞洲は、東側が物流・環境ゾーン、西側はスポーツ・レクリエーションゾーンに区分されています。

大阪府の面積が全国最小から2番目になった理由

大阪府の面積が全国最小から2番目になった理由
大規模な埋立地で成り立つ関西空港

現在、一番狭い県は香川県ですが、1988年まで大阪が日本一狭かったのです。大阪府の面積は1985年の時点で1867.86 ㎢ ですが、1995 年には1892.06 ㎢に増加。これは大阪湾の埋め立てに伴うものですが、とくに1991年に第1期造成工事が完了した関西国際空港(関空)の影響が大きいのです。

いっぽうの香川県は1985年に1882.11㎢でしたが1988年に1860.39 ㎢と減少。その原因は国土地理院による算定法の見直しや、県境未定地の面積が省かれたためです。

つまり、関空島が完成する以前に、大阪府は面積が最下位でなくなっていたのです。

大阪府の面積が全国最小から2番目になった理由

1988年に2つの県の面積が逆転。

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こんなに違った古代の大阪! 消えた河内湾と河内湖 ほか

Part.2:大阪を駆ける充実の交通網
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徹底比較! 大阪の私鉄(阪急電鉄と阪神電鉄、京阪電気鉄道、近畿日本鉄道、南海電気鉄道) ほか

Part.3:大阪の歴史を深読み!
幕府軍が落とせなかった千早赤坂城の秘密
織田信長に恭順して残された富田林寺内町
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Part.4:大阪で生まれた産業や文化
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万博、花博、EXPO2025など国際博覧会の最多開催地・大阪
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<コラム>
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