約１万2000年前ごろに氷河期が終わると氷が溶けて海面が少しずつ高くなり、約5500年前には現在の大阪平野にまで海水が入り込んできました。このとき平野部にできた内海が「河内湾」です。

海面は現在の水位より１mほど高かったといわれ、範囲は現在の高槻市から八尾市にまであったとされます。上町台地も半島のような形状となり、砂浜は松屋町（まつやまち）筋付近にまで広がっていました。

しかし、この内海は約2000年前までに姿を消します。北の淀川と南の大和川から土砂が流入し、規模が徐々に縮小していったからです。上町台地も海側から波で運ばれる砂で北へと延伸し、弥生時代の初期には湾の入り口をほぼふさいでしまいました。

その結果、河内湾は海と切り離された湖である「河内潟」となり、南北の川から数百年かけて川水が流れ込み、淡水湖の「河内湖」へと変化したのです。

この湖があったのは生駒山地（いこまさんち）と上町台地の間、大阪平野の一部である現代の河内平野にあたる場所です。５世紀ごろに淡水化した湖は「太陽の昇る山麓」を意味する草香江（くさかえ）とも呼ばれ、周辺地域は稲作などの農業もさかんだったようです。

実際、四條畷市（しじょうなわてし）と寝屋川市（ねやがわし）を流れる「讃良川（さらがわ）」などの近隣河川からは、縄文から弥生時代までの遺跡が発見されていますし、住居や水田の水害跡も見つかっているので、大小さまざまな集落があったのは間違いないでしょう。

河内湖はその後も河川の土砂流入で規模を縮小していき、５世紀前半に仁徳天皇が難波に宮殿を置いたことから、水害防止の治水事業もはじまったとの伝承もあります。その際、「難波の堀江」と呼ばれる排水口の設置で水域は次第に狭まり、湖は湿地へと変わったのです。

河内湖の名残とされる「新開池（しんがいけ）」と「深野池（ふこのいけ）」は江戸時代まで残っていましたが、大和川付け替え工事による水量の大幅減少と水田の開拓で消滅しました。

その後も水害対策や宅地開発で土地の改造が進み、現在では河内湖をしのぶ遺構はほとんど残っていません。

かつて、日本にワニは棲息しなかったと考えられていましたが、それを覆したのが「マチカネワニ」の化石です。

発見されたのは豊中市待兼山町（まちかねやまちょう）の工事現場。1964年に、ほぼ完全な形で発見されたこの化石は、その後の学術調査で約45万前に棲息していた全長７ｍのワニであることがわかりました。

名前の由来は発見された町名から。2014年には国の登録記念物に登録され、豊中市キャラクターである「マチカネくん」のモデルにもなっています。化石は現在、大阪大学総合学術博物館で保存され見学も可能です。

大阪府の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。大阪府の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載！

【見どころ―目次より抜粋】
Part.1：地図で読み解く大阪の大地
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こんなに違った古代の大阪! 消えた河内湾と河内湖　ほか

Part.2：大阪を駆ける充実の交通網
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どの道路が、なぜ混むのか？大阪の道路網の現状
徹底比較! 大阪の私鉄（阪急電鉄と阪神電鉄、京阪電気鉄道、近畿日本鉄道、南海電気鉄道）　ほか

Part.3：大阪の歴史を深読み!
幕府軍が落とせなかった千早赤坂城の秘密
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Part.4：大阪で生まれた産業や文化
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<コラム>
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