紫式部執筆『源氏物語』の誕生
愛情と政治が密接に結びついた平安後期。その時代に生まれ後宮に出仕していた紫式部が書いた『源氏物語』。
紫式部が蓄積した経験が、一大小説へと昇華されていく背景とはどのようなものだったのでしょうか。三部まで続く源氏物語の構成と内容、そして紫式部の草稿から冊子本がつくられた当時の製作過程と合わせて、詳しくみていきましょう。
紫式部を巡る人々
愛情と政治が密接に結びついた平安後期。紫式部が執筆した『源氏物語』は、藤原道長や藤原彰子をはじめ、紫式部を取り巻くさまざまな人物が関係していたといっても過言ではありません。
紫式部を取り巻いた登場人物を改めて見てみましょう。
紫式部が生きた平安時代後期
『源氏物語』が成立した1000年頃は、藤原氏を中心として貴族文化が花開いた時代です。華やかな装束に身を包み、和歌や管絃に興じる平安貴族たちの生活は、現代に生きる私たちにはとても優雅な印象を与えます。
しかし、平安貴族たちは、その優雅さの陰で、家の浮沈をかけた熾烈な権力闘争を繰り広げていました。その舞台となったのが後宮です。
政権を手に入れるため、藤原氏たちは娘を競って帝に入内させ、皇子の誕生を期待しました。その皇子が即位すれば、摂政・関白として帝に絶大な影響力を与え、思うがままに政治を執ることができます。けれども、皇子が得られなければ、家の将来はありません。妃たちがひしめく後宮は、厳しい権力闘争の場でもあったのです。
藤原氏たちは、この権力闘争に打ち勝つため、娘の身辺に優秀な女房たちを集めました。そして、その女房たちによって優れた文学作品が生み出されました。『源氏物語』の作者・紫式部もまた藤原道長の娘・彰子に仕えた、そうした女房のひとりなのでした。
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世界最古の長編小説ともいわれる『源氏物語』は、平安時代の宮廷を舞台に展開される主人公・光源氏と女性たちの恋愛模様を描いた物語で、今もなお多くの人に愛読される日本文学の古典です。ですが、全54帖という長編ゆえに最後まで読み通すのは大変困難な作品であることでも知られています。
本書はこの大長編小説『源氏物語』のあらすじと、作者・紫式部の人と生涯を図版と地図を豊富に用いながらわかりやすく解説した『源氏物語』の入門書です。
【第1部】紫式部とその時代
〔第1章〕平安時代の後宮生活
〔第2章〕紫式部の生涯
【第2部】 押さえておきたい『源氏物語』
〔第3章〕光源氏の青年時代―恋の旅路を歩む貴公子
〔第4章〕栄華の頂点―位人臣(くらいじんしん)を極めた光源氏
〔第5章〕宇治十帖―光源氏亡き後の世界
【監修者】竹内正彦
1963年長野県生まれ。國學院大學大学院博士課程後期単位取得退学。博士(文学)。
群馬県立女子大学文学部講師・准教授、フェリス女学院大学文学部教授等を経て、現在、國學院大學文学部日本文学科教授。専攻は『源氏物語』を中心とした平安朝文学。著書に『源氏物語の顕現』(武蔵野書院)、『源氏物語発生史論―明石一族物語の地平―』(新典社)、『2時間でおさらいできる源氏物語(だいわ文庫)』(大和書房)、『図説 あらすじと地図で面白いほどわかる!源氏物語(青春新書インテリジェンス)』(青春出版社、監修)、『源氏物語事典』(大和書房、共編著)ほか。
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