目次
ジンバブエのインフレ体質
ジンバブエでは1980年にイギリスから独立してから2017年まで、37年間にわたって反植民地闘争の英雄ムガベが独裁を続けていました。独立後しばらくは黒人と白人の融和策をとっていましたが、2000年頃から白人の土地を強制収用して黒人に再分配する政策を打ち出すようになり、多くの白人が国外に逃亡します。黒人は土地を手にしたものの、農業のノウハウがなかったため、ジンバブエの農業生産力は大きく低下し、食料不足が深刻化。物価の上昇が止まらなくなってしまったのです。
ジンバブエで起こった超ド級のハイパーインフレ
政府はインフレ対策として、2007年6月に価格統制令を出します。ほぼすべての製品・サービスの価格を強制的に半額にするという乱暴なものです。この法令によって、無理に半額にすれば売価が原価割れし、売れば売るほど赤字が出るようになりました。
さらに同年9月に外資系企業の株式強制譲渡法案が成立すると、ジンバブエに進出していた外資系企業はいっせいに撤退し、国内は極端なモノ不足に見舞われました。結果、インフレがますます加速し、それに対応しようと政府が貨幣を大量供給したため、2008年6月には推定1120万%以上ものハイパーインフレに陥ってしまいます。
ハイパーインフレとは
デフレ
物価が下がり続ける状態。通貨の価値が上昇
インフレ
物価が上がり続ける状態。通貨の価値が下落。
ハイパーインフレ
物価が急速かつ過度に上昇し、制御不能になる。1ヵ月間に数十%もの激しい上昇が続き、100%、1000%、10000%…といったインフレ率を記録することもある。
ジンバブエのハイパーインフレの経過
2000年代に入り、インフレがはじまる
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政府による対策が打ち出される
・労働者の賃金をアップさせる
・黒人が白人の農地が強奪することを合法化する
・外資系企業が保有するジンバブエ企業の株式を強制的に譲渡させる
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農産物の生産が不振に陥る
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さまざまなモノが不足する
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物価上昇に歯止めがかからず、ハイパーインフレが発生
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政府はインフレ対策として商品価格を半額にする
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多くの企業が倒産に追い込まれ、ますますインフレが進む
ジンバブエ政府によるハイパーインフレへの試行錯誤の対応
激しい物価上昇とともに価格表示が困難になったため、政府は新紙幣発行とデノミネーション(通貨単位の切り下げ)を実施。100億ジンバブエ・ドルは1ジンバブエ・ドルと交換されました。
2009年にはジンバブエ・ドルは廃止され、米ドルなどが法定通貨になります。それから10年後の2019年にジンバブエ・ドルが再導入され、通貨価値を米ドルと等価としましたが、翌年には再びハイパーインフレで紙幣が不足し、米ドルを再導入することである程度の通貨秩序を取り戻しました。
こうした苦難の歩みから生まれたデジタル通貨ZiG。インフレの根本的な解決にはなりませんが、社会の安定に寄与することが期待されています。
『地図でスッと頭に入る世界経済』好評発売中!
G7に代表される先進国が世界経済をリードする時代は、もはや終わりを告げました――。それを示すかのように、昨今のニュースでは「グローバルサウス」「BRICS+6」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。
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いま、何が問題となっているのか、世界経済はどこへ向かっているのかを地図や図解で紹介していきます。
第1章:世界経済の「トレンド」を知る
・ウクライナ危機と資源価格の高騰により、世界的なインフレが進行中
・世界の「ブロック経済化」によって何が起こるのか?
・半導体の輸出規制で、米中の半導体戦争がはじまった
・中国主導によって実現した「BRICS+6」で、人民元の国際化を狙っている
・西側諸国がグローバルサウスを無視できない理由
・ベロシティー12(次に成長する国)の特徴とは?
・ものづくりをしないメーカー、ファブレス企業とは何か?
・仮想通貨(暗号資産)が、ふつうの通貨になりえるのか?
・TPP、IPEFなど、これまでとは違った貿易協定が誕生し、貿易地図が塗り替わる
・輸出入規制で相手国より優位に立とうとする「経済的威圧」が起こっている
・AIの進歩で奪われる仕事、新たにつくられる未来
・消費から循環へ。新しい経済のあり方(サーキュラーエコノミー)が登場している
・切っても切れない移民と経済成長
・異常気象に世界の経済が翻弄されている
第2章:エリア別・経済トピックをつかむ
アメリカ経済(南北アメリカ)
・アメリカ生まれのGAFAMが急成長できた理由とは?
・アップルの製造拠点をたどると、経済成長国のトレンドが見えてくる
・ニュースで耳にする米雇用統計は、なぜ注目される?
・地位低下に焦るブラジルは、グローバルサウスの雄を目指す
・中南米で再び加速しはじめたハイパーインフレーション
アジア経済
・中国の一帯一路構想から10年。巨額融資が限界に近づいた
・不動産に依存した経済成長モデルはもう終わり
・台湾の経済成長の原動力となった半導体 産業
・アジアの金融センターとなった香港のいま
・複雑性を増すASEANと中国の関係
・日本と比較すると見えてくる韓国経済の強み
・ベトナムの成長力が東南アジアで突出している理由
・「IT大国」として世界3位の経済大国となるインド
・これから注視すべきは、世界に広がる印橋(インド系移民)も流れ
・首都移転事業で大国の企業を取り込もうとするインドネシア
ヨーロッパ経済
・ウクライナ危機で露呈した資源のロシア依存の危うさ
・ロシアへの経済制裁は効いている? 効いていない?
・世界でドル離れが起こっている。つぎの基軸通貨はユーロか?
・ECBの金融政策が大きな転換点を迎えている
・イギリスのブレグジットで、外国企業は撤退をはじめた
・2050年のカーボンニュートラル(脱炭素)をリードするEUに黄信号
・EUの優等生・ドイツに異変。実質成長率がマイナスに
中東・アフリカ経済
・なぜかアフリカに多い中国人。ねらいはアフリカの資源開発と市場開発
・オイルマネーは限界? 石油・天然ガス依存からの脱却をはかるサウジアラビア
・官主導のアラブ経済が岐路に立つ
・南アフリカにとって日本は、意外にも重要な貿易相手国
・中東とアフリカでも注目されはじめたグリーンビジネス
第3章:世界のなかのニッポン経済
・コロナ後、日本経済の回復が遅れている理由とは?
・日本が「安い国」になってしまったのはなぜ?
・アジアの国々が日本を下請けにする日がまもなくやってくる!?
・経済停滞と人口減により、こんな未来が待っている
・次世代自動車の開発で出遅れた日本の一発逆転とは?
・レアメタル確保のために金属資源の再利用できる技術開発に注力
・1円の円安で450億円利益が出るトヨタだが、資材価格が高騰という「影」も
・人手不足が景気上昇の足かせに
・金価格高騰とウクライナ侵攻の関係
・漫画文化の輸出に失敗した日本政府
・日本の安全をセットにして売り込みはじめた鉄道事業
・品質の高さから海外でも高く評価されている農産物。その輸出額が1兆円突破
【監修者】蔭山 克秀(かげやまかつひで)
代々木ゼミナール公民科講師。愛媛県新居浜市出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。代々木ゼミナールでは、「現代社会」「政治・経済」「倫理」「倫理政治経済」をすべて指導。また、4科目すべての授業が「代ゼミサテライン」(衛星放送授業)として全国に配信されている。主な著書に『やりなおす経済史』『やりなおす戦後史』(以上、ダイヤモンド社)、『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』(KADOKAWA)、『マンガみたいにすらすら読める哲学入門』(大和書房)、『世界の政治と経済は宗教と思想でぜんぶ解ける!』(青春出版社)などがある。
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