一帯一路構想へG7唯一の参加国も離脱
パキスタンとの間で進んでいる中国・パキスタン経済回廊の建設では、パキスタン側の対中債務が膨張。同国政府は中国寄りの姿勢を改めはじめています。ラオスでも高速鉄道建設などで生じた対中債務の増加が問題になりました。
そうしたなか、2023年12月にはイタリアが一帯一路構想からの離脱を中国に通達します。「期待した成果をもたらさなかった」というのが理由でした。
イタリアはG7(日本、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、ドイツ、イタリア)で唯一の一帯一路参加国。その離脱は、中国にとっても少なからぬダメージになったのではないでしょうか。
当初は一帯一路を歓迎していた国々も今では警戒感を強め、中国からの投資に慎重な姿勢をとりはじめているのです。
一帯一路構想のトラブル
ラオス
高速鉄道建設などで生じたラオスの対中債務がGDPを超えたため問題化。
スリランカ
債務の返済が滞ると、ハンバントタ港の99年におよぶ利用権が中国に貸し出された。
ネパール
中国のチベット自治区からネパールまでをつなげる中国・ネパール越境鉄道の建設において、ネパール側の負担増大が懸念され、事業計画が停滞中。
パキスタン
中東やアフリカ方面からの石油の輸送ルートとして期待される中国・パキスタン経済回廊の建設において、パキスタンの対中債務が膨れ上がる。
イタリア
「期待した成果をもたらさなかった」として、イタリアが一帯一路構想からの離脱を決める。
中国+中・東欧諸国協力枠組み
中国は2012年に中・東欧諸国と経済協力枠組みを創設し、一帯一路の試金石にしようとしていました。しかし、2021年以降、リトアニア、ラトビア、エストニアが権威主義国の影響力拡大を警戒し、相次いで離脱。これもまた、中国には大きな痛手となっています。
『地図でスッと頭に入る世界経済』好評発売中!
G7に代表される先進国が世界経済をリードする時代は、もはや終わりを告げました――。それを示すかのように、昨今のニュースでは「グローバルサウス」「BRICS+6」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。
この言葉は、今後、世界を牽引していく国々を指しており、このなかにG7の国はありません。加えて、ウクライナ危機による世界的インフレ、半導体不足、カーボンニュートラルへの抵抗など、世界経済は混迷をしているといってよいでしょう。
そんな世界の動きと行方を知りたいと思いながらも、経済となると複雑で難しいものと感じてしまう読者に向けて、押さえておくべきトピックをわかりやすく解説するのが本書。国内の身近な話題から国家間の問題まで幅広く扱います。
いま、何が問題となっているのか、世界経済はどこへ向かっているのかを地図や図解で紹介していきます。
第1章:世界経済の「トレンド」を知る
・ウクライナ危機と資源価格の高騰により、世界的なインフレが進行中
・世界の「ブロック経済化」によって何が起こるのか?
・半導体の輸出規制で、米中の半導体戦争がはじまった
・中国主導によって実現した「BRICS+6」で、人民元の国際化を狙っている
・西側諸国がグローバルサウスを無視できない理由
・ベロシティー12(次に成長する国)の特徴とは?
・ものづくりをしないメーカー、ファブレス企業とは何か?
・仮想通貨(暗号資産)が、ふつうの通貨になりえるのか?
・TPP、IPEFなど、これまでとは違った貿易協定が誕生し、貿易地図が塗り替わる
・輸出入規制で相手国より優位に立とうとする「経済的威圧」が起こっている
・AIの進歩で奪われる仕事、新たにつくられる未来
・消費から循環へ。新しい経済のあり方(サーキュラーエコノミー)が登場している
・切っても切れない移民と経済成長
・異常気象に世界の経済が翻弄されている
第2章:エリア別・経済トピックをつかむ
アメリカ経済(南北アメリカ)
・アメリカ生まれのGAFAMが急成長できた理由とは?
・アップルの製造拠点をたどると、経済成長国のトレンドが見えてくる
・ニュースで耳にする米雇用統計は、なぜ注目される?
・地位低下に焦るブラジルは、グローバルサウスの雄を目指す
・中南米で再び加速しはじめたハイパーインフレーション
アジア経済
・中国の一帯一路構想から10年。巨額融資が限界に近づいた
・不動産に依存した経済成長モデルはもう終わり
・台湾の経済成長の原動力となった半導体 産業
・アジアの金融センターとなった香港のいま
・複雑性を増すASEANと中国の関係
・日本と比較すると見えてくる韓国経済の強み
・ベトナムの成長力が東南アジアで突出している理由
・「IT大国」として世界3位の経済大国となるインド
・これから注視すべきは、世界に広がる印橋(インド系移民)も流れ
・首都移転事業で大国の企業を取り込もうとするインドネシア
ヨーロッパ経済
・ウクライナ危機で露呈した資源のロシア依存の危うさ
・ロシアへの経済制裁は効いている? 効いていない?
・世界でドル離れが起こっている。つぎの基軸通貨はユーロか?
・ECBの金融政策が大きな転換点を迎えている
・イギリスのブレグジットで、外国企業は撤退をはじめた
・2050年のカーボンニュートラル(脱炭素)をリードするEUに黄信号
・EUの優等生・ドイツに異変。実質成長率がマイナスに
中東・アフリカ経済
・なぜかアフリカに多い中国人。ねらいはアフリカの資源開発と市場開発
・オイルマネーは限界? 石油・天然ガス依存からの脱却をはかるサウジアラビア
・官主導のアラブ経済が岐路に立つ
・南アフリカにとって日本は、意外にも重要な貿易相手国
・中東とアフリカでも注目されはじめたグリーンビジネス
第3章:世界のなかのニッポン経済
・コロナ後、日本経済の回復が遅れている理由とは?
・日本が「安い国」になってしまったのはなぜ?
・アジアの国々が日本を下請けにする日がまもなくやってくる!?
・経済停滞と人口減により、こんな未来が待っている
・次世代自動車の開発で出遅れた日本の一発逆転とは?
・レアメタル確保のために金属資源の再利用できる技術開発に注力
・1円の円安で450億円利益が出るトヨタだが、資材価格が高騰という「影」も
・人手不足が景気上昇の足かせに
・金価格高騰とウクライナ侵攻の関係
・漫画文化の輸出に失敗した日本政府
・日本の安全をセットにして売り込みはじめた鉄道事業
・品質の高さから海外でも高く評価されている農産物。その輸出額が1兆円突破
【監修者】蔭山 克秀(かげやまかつひで)
代々木ゼミナール公民科講師。愛媛県新居浜市出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。代々木ゼミナールでは、「現代社会」「政治・経済」「倫理」「倫理政治経済」をすべて指導。また、4科目すべての授業が「代ゼミサテライン」(衛星放送授業)として全国に配信されている。主な著書に『やりなおす経済史』『やりなおす戦後史』(以上、ダイヤモンド社)、『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』(KADOKAWA)、『マンガみたいにすらすら読める哲学入門』(大和書房)、『世界の政治と経済は宗教と思想でぜんぶ解ける!』(青春出版社)などがある。
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