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第二次世界大戦と第一次中東戦争、そしてイスラエル建国
第一次世界大戦後も、イスラム世界では列強支配とこれに抗する反帝国主義民族運動は続きます。
イギリスは大戦中アラブ反乱で功績のあったハーシム家の兄弟を委任統治領のうちイラクとヨルダンの国王とします。同じくパレスチナもイギリスが委任統治下に置きました。ここでいうパレスチナとは歴史的・地理的な概念です。そしてパレスチナが大きな難題になっていきます。ユダヤ人のパレスチナ入植は、ユダヤ人にとっては受難を経た約束の地への帰還であり、すでに住んでいたパレスチナ人にとっては新たな植民地主義者の侵入だったのです。
第二次・第三次中東戦争で複雑化していく
第二次世界大戦という戦争は、中東・イスラム地域ではアラブ民族主義が高揚、社会主義と世俗化をもたらしました。エジプトではクーデターで権力を掌握し国王を追放したナセルの率いる自由将校団は、ソ連圏から兵器を導入して軍の近代化を目指します。その後ナイル川のアスワン・ハイ・ダム建設をめぐるアメリカともめるとナセルはスエズ運河を国営化、反発した英仏がイスラエルを誘って第二次中東戦争(スエズ動乱)が始まります。
第二次中東戦争後イスラエルは孤立、パレスチナゲリラによる越境攻撃やその報復と応酬が激化、アラブ周辺国とのあいだで緊張が高まります。シナイ半島に展開していた国連軍が撤退すると、エジプトはイスラエルの紅海への出口アカバ湾を封鎖、緊張が最高度に高まるなか、イスラエルは通告なくエジプト・シリア・ヨルダンを急襲し第三次中東戦争=6日間戦争が勃発しました。この戦争でイスラエルが占領した地はシナイ半島を除き現在まで占領されたままとなり、また新たに100万人以上が難民となったのです。
第四次中東戦争後、和平は見えたのか
第三次中東戦争でイスラエル圧勝後、70年代以降は世俗的近代主義が凋落し、欧米と近代化を嫌いイスラムの伝統の教えに戻ろうとするイスラム復興運動、なかでもイスラム信仰のためには過激な手段をも厭わないジハード主義者らの勢力が増していきます。
第四次中東戦争が引き起こした第一次石油ショック
1973年、第三次中東戦争で奪われた領土の奪還を目指し、ナセル亡き後のエジプトのサダト大統領が、シリアと共にイスラエルを奇襲します。第四次中東戦争が勃発したのです。イスラエルはこの戦争で大損害を出しましたが、反撃に出てイスラエル優位の状況で停戦となりました。戦争中の禁輸措置を受け第一次石油ショックが起きました。
非アラブの産油国であるイランには大きな利益をもたらします。人権、民主主義、報道の自由などを抑圧したままでの「ゆがんだ」近代化に対する不満が中流階級の間で広がっていきます。さらに石油収入の増大は、独裁的な支配層の腐敗の体質を極大化しました。イランに限らず、イスラム復興主義勢力が伸張、各国のジハード主義者らが流入しました。
数々の戦争の後も、中東問題は解決していない
第四次まであった中東戦争、その後のイスラエルとパレスチナの対立で生じた中東の大問題は、両者が1993年に結んだオスロ合意により解決の道筋が示されたかに見えました。しかし、パレスチナ難民の帰還の具体策といった難しい問題は先送りされ、時間をかけて問題解決にむけた交渉が行われるはずでした。しかし1995年に合意を結んだイスラエルのラビン首相がユダヤ人によって暗殺されると交渉の雲行きが怪しくなります。
その後、アメリカ同時多発テロやイスラム国の台頭などジハード主義とアメリカとも戦争が続くことになります。数々の戦争の後の進まないイスラエルの和平やジハード主義の台頭そして衰退。複雑化していく中東の和平は、まだ模索の最中にあるのです。
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ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
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その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載
好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。
掲載している国・地域
イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア
【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)
福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。
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