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セルジューク朝トルコの拡大とペルシャ人宰相の活躍

中央アジアから西進するセルジューク朝トルコは、イラン・イラク・シリアにまで達し1055年にはバグダードに入城、アッバース朝カリフからスルタン(支配者)の称号を得ます。71年にはマラズギルト(マンジケルト)の戦いでビザンツを破り、アナトリアのトルコ化とイスラム化を促しました。

ビザンツ圧迫は後の西洋からの十字軍遠征の原因ともなります。後のモンゴルと同様、遊牧民出身の彼らは中央アジア西部やペルシャ地域支配のためペルシャ系から宰相・官僚を採用しました。

なかでも宰相ニザーム・アルムルク(1018〜92)は徴税・商業環境を整備、シーア派ファーティマ朝に対抗して各地に初等学校やニザーミーヤ学院と呼ばれるマドラサ=高等教育機関を設け、スンナ派法学と教義の統一および普及を進めました。公用語・学術語・文学語としてのペルシャ語の使用拡大とアラビア語に次ぐ地位獲得もこの頃です。

中東の歴史に現れる最初の厄災

この偉大なペルシャ人宰相を引退後に殺害したのがシーア派分派の暗殺者集団、アサシン教団です。彼が仕えたスルタン、マリク・シャーをも殺害したとする説もあります(病没説も)。この2人の死を契機にセルジューク朝は跡目争いで分裂、衰退していきます。

この時期にイスラム世界を襲ったのが2つの厄災でした。すなわち十字軍とモンゴルです。

地図で見る、11世紀後半のイスラム世界

※拡大できます

セルジューク朝代のキーワード

アサシン教団

シーア派分派のイスマーイール派のさらに分派であったニザール派への、西洋人による呼称。謀略に政治的暗殺を用いたことから後に政治的暗殺がアサシネーション(assassination)と呼ばれるようになりました。この急進的集団の指導者ハサネ・サッバーフはイラン北部エルブールズ山中のアラムート(鷲の巣)城砦を拠点に教団を組織化、教団はセルジューク朝高官や著名なスンナ派ウラマー(イスラム知識人)らを次々と殺害しました。

ニザーミーヤ学院

セルジューク朝宰相ニザーム・アルムルクが、自らの名を冠して各地に設けた高等教育機関(マドラサ)。スンナ派法学・神学を教えました。当時の中枢都市イスファハーン、ニーシャープール、ヘラートのものなどが知られ、なかでも1067年設立のバグダードの学院は有名で、スンナ派神学者・宗教思想家であるガザーリーが教鞭を執ったことでも知られています。

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その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

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また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

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