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第三次中東戦争後、アラブは大敗しイスラムは復興へ向かった

第二次中東戦争後イスラエルは孤立、パレスチナゲリラによる越境攻撃やその報復と応酬が激化、アラブ周辺国とのあいだで緊張が高まっていきました。

67年5月エジプト軍が、シナイ半島に集結しました。またシナイ半島に展開していた国連軍が撤退します。これは第二次中東戦争後にイスラエルとエジプト両軍を引き離すために派遣されていた部隊でした。22日エジプトはイスラエルの紅海への出口アカバ湾を封鎖、緊張が最高度に高まるなか6月5日早朝、イスラエルは通告なくエジプト・シリア・ヨルダンを急襲し、第三次中東戦争=6日間戦争が勃発したのです。

第三次中東戦争におけるイスラエルの奇襲

イスラエル空軍は奇襲によってアラブ側の航空機の大半を地上で破壊、制空権を奪い、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区、ガザ地区、ゴラン高原、シナイ半島を占領して圧勝しました。第三次中東戦争でイスラエルが占領した地はシナイ半島を除き現在まで占領されたままとなり、また新たに100万人以上が難民となっています。

第三次中東戦争後のイスラエル、エジプト、パレスチナの動向

同67年11月、第三次中東戦争の戦後処理に国連安保理決議242号が採択されました。この決議は占領地からのイスラエル軍の撤退を求めました。

第三次中東戦争の敗北でナセルも、その世俗的かつ社会主義的なイデオロギーも影響力を失います。ナセルは1970年に死去。後継者のサダトは、イスラム勢力の取り込みを狙いました。代わってエジプトのイスラム復興主義組織ムスリム同胞団は活動を活発化、各国の分派は急進化しました。

現在もガザ地区で民衆の支持を集めるイスラム復興主義組織ハマスも、そのひとつです。もともとパレスチナ難民管理のため、エジプトらが設置したパレスチナ解放機構(PLO)の実権は戦後パレスチナ人が握り、69年には後にパレスチナ自治政府代表となるアラファトがPLO議長に就任しました。パレスチナ人は自らの力を頼りにパレスチナ解放・独立を目指していくことになります。

地図で見る、第三次中東戦争終結時のイスラエルの支配地域

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第三次中東戦争のころのキーワード

第三次中東戦争後の国連安保理決議242号

第三次中東戦争の戦後処理のために、国連安保理で採択された決議です。その後の和平の大枠を定めています。イスラエルの占領地からの撤退を求め、全ての国が平和に存続する権利を謳っています。ただしパレスチナ人に関しては難民としてのみ言及しており、その民族自決権には触れていません。またイスラエルが撤退を求められている占領地の範囲が、明確ではありません。

パレスチナ解放機構(PLO)

当初パレスチナ難民管理のため、ナセル主導でつくられたパレスチナ人代表機関。第三次中東戦争を経て1969年に議長に就任したアラファトのもと、エジプトの影響を脱しパレスチナ解放運動の中核となり、対シオニズム武装闘争を行いました。

74年モロッコで行われたアラブ首脳会議で、パレスチナに関する独立主権を認められました。ヨルダン川西岸地区とガザ地区でのパレスチナ暫定自治政府(評議会)設置、イスラエル軍のガザ地区および西岸の都市エリコからの撤退などを定めた、パレスチナ暫定自治協定(オスロ合意)が93年PLOとイスラエルの間で結ばれました。

ヤセル・アラファト(1929〜2004)

パレスチナ解放運動の指導者。50年代にゲリラ戦によるパレスチナ民族解放を目指す軍事・政治組織であるファタハを設立しました。ファタハは第三次中東戦争を経て、パレスチナ人の主要勢力として台頭しアラファトは69年PLO議長に就任、PLOの実権を握ります。

74年10月アラブ首脳会議を経て、同年11月初めて国連総会にオブザーバー参加しました。82年イスラエル軍のレバノン侵攻により、拠点をベイルートからチュニジアにします。96年パレスチナ自治選挙でパレスチナ自治政府長官に。2004年死去、イスラエルによる毒殺と広く信じられています。

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また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

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