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パレスチナ問題の難壁となったイスラエル建国

ロシアのユダヤ人迫害(ポグロム)などによるパレスチナへのユダヤ人入植は、17年バルフォア宣言を受け増加、33年独ナチス政権誕生後にユダヤ移民はさらに増えました。ドイツからの難民の流入で、パレスチナのユダヤ人社会は大きく発展しました。

同時にパレスチナ人側は反発を強めました。第二次世界大戦でドイツの敗色が濃くなると、ユダヤ人たちはイギリスの追い出しを狙い対英テロを開始しました。また第二次大戦中にアメリカのユダヤ人たちが、ユダヤ国家建設を熱く支持するようになっていきます。欧州のユダヤ人の多くが虐殺されたこともあり、世界のユダヤ社会は重心をアメリカに移しました。そして、そのアメリカがイスラエルの後ろ盾となったのです。

第一次中東戦争後のイスラエル建国とパレスチナ問題

大戦終結後、疲弊したイギリスはパレスチナ問題を国連に委ねました。47年に国連は同地をユダヤ人国家とパレスチナ人国家に分割すると決議、48年イギリスが撤退するとシオニストらはイスラエル国家樹立を宣言反対するアラブ諸国との間に第一次中東戦争が起こります。勝ったのはイスラエルでした。

イスラエル建国当時の支配地域

戦争が終わった時にイスラエルは、国連がユダヤ人国家に割り当てたよりも広い地域を支配していました。これは、イギリスが委任統治していたパレスチナの約78パーセントに当たります。残りのガザ地区をエジプトが、そしてエルサレムの歴史的な旧市街を含むヨルダン川西岸を当時のトランス・ヨルダンが押さえました。現在のヨルダンです。どこにもパレスチナ人の国はなかったのです。

第一次中東戦争終結時のイスラエル

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パレスチナ問題とホロコースト

この過程でパレスチナ人の虐殺が各地で発生しました。よく知られているのが100名以上の虐殺があったデイル・ヤシーン村です。現在のホロコースト記念館ヤド・バシェムの周辺に位置します。また75万人ものパレスチナ人が、難民として故郷を離れました。パレスチナ人は、これを大厄災(だいやくさい)=ナクバと呼びます。

イスラエルは難民の帰還を許さず、その不動産などを不在者財産の没収法などを定めて「合法的」に接収しました。こうした状況にもかかわらず、欧米諸国を中心に国際世論は概してイスラエルに同情的でありました。その背景にあったのは、ホロコーストを防げなかったという罪悪感でした。

地図で見る、イスラエル建国とイスラム世界各国の独立

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パレスチナ問題とイスラエル建国に関わる第二次世界大戦前後のキーワード

イスラエル建国の理念 シオニズム

19世紀後半に、ヨーロッパやロシアでのナショナリズムや反ユダヤ主義の高まりを背景に生まれた、パレスチナにユダヤ国家を建設しようとする運動

運動の政治的理念は、ブダペスト生まれのユダヤ人新聞記者テオドール・ヘルツェル(1860〜1904)がウィーンで発表した『ユダヤ人国家-ユダヤ人問題の現代的解決の試み』(1896)を基盤とし、複数のシオニスト会議を経て運動は組織化、イギリスがパレスチナに第一次大戦後ユダヤ人の民族郷土を建設することを認めたバルフォア宣言は大きな成果と受け取られました。

ポグロム、ホロコースト、ショア

19世紀末〜20世紀初頭、帝政ロシアで起こったユダヤ人への集団暴力事件をロシア語でポグロムと呼び、ユダヤ人の国外移住を促しました。1970年代にアメリカで放映されたナチス・ドイツ下のユダヤ人家族の運命を取り上げたTVシリーズ「ホロコースト」が影響し、戦時下ユダヤ人殺害をホロコーストと呼び習わすようになりました。ユダヤ研究者やイスラエルでは、ヘブライ語のショア(Shoah)と呼ぶ場合も多いです。

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ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。

その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

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