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ティムールが残した農商業、文物や芸術の発展

ティムールは同時にマーワランナフル繁栄に情熱を注ぎ、建築や商業・交易、農業の振興にも努めました。建築ではビビ・ハニム・モスクは表門がアーチ部分崩落の後でさえも高さ33メートル。グリ・アミールのドームは地上37メートル、白い宮殿を意味するアクサライ宮殿の表門は完成時50メートルもの高さでした。

また、交易振興のためにティムールは交通路を整備したうえ安全を確保し、駅逓制度を整え、フランスのシャルル6世に親書を送り通商を要請しています。農業では概ね生産増大を旨とし、各地の河川流域で用水路を建設・修復し、後継者にもキルギス地方の農業復興を命じました。

これら振興策は奏功し、ティムールの晩年サマルカンドのバザールには、ロシアなどからの皮革・麻布、中国などからの絹織物・麝香(じゃこう)・ルビー・ダイヤ・真珠・大黄などの香辛料、インドなどからのナツメグ・丁字(ちょうじ)・シナモンほかが並び、近郊の農産物も豊かでしかも安価だったといいます。

ティムール朝の歴代君主たち

ティムール朝の歴代君主は学芸を保護し、4代ウルグ=ベグ(位1447〜49)は天文学も修めサマルカンドに天文台を建設、学者や詩人を宮廷に呼び優遇しました。帝国の学芸の高揚はイタリア・ルネサンスになぞらえティムール朝ルネサンスと呼ばれ、最後のスルタン・フサイン治下の文化都市へラートはフランス史家によりイタリア・ルネサンスにおけるフィレンツェに例えられました。

その後ティムール朝は衰退し16世紀初めトルコ系民族に滅ぼされましたが、ティムールの子孫バーブル(位1526〜30)はインドにムガル朝を建て、タージ・マハル建立で知られる5代シャー・ジャハーンはティムールを理想の為政者としました。

ティムール朝の最大版図

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ティムール朝に関するキーワード

ナヴァーイー(1441〜1501)

ティムール朝最後のスルタン・フサイン宮廷の高官・実力者にして文人・詩人、学者、芸術家アラビア文字で表記されるトルコ語の文章語=チャガタイ語・チャガタイ文学の確立者です。慈善活動や学芸保護に努め、当時のヘラートの学芸の繁栄を支えました。

ミニアチュール(細密画)

ティムール朝の当時の著作は手書きによる写本として流通し、こうした写本にはしばしば繊細な絵画(細密画)が挿入されました。ティムール朝では宮廷でこうした細密画のための画家を育成しました。イスラム世界の細密画はアッバース朝代に始まりますが、中国絵画の影響を受け13世紀イル・ハン国で様式が確立。ティムール朝代にペルシャン・ミニアチュールの黄金期を迎えました。後ムガル朝でも行われています。

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ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
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その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

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