トップ > カルチャー >  海外 > 中東 >

アルジェリアの対岸がフランスという不運

アルジェリアの愛称は、チェリーとデーツの国。地中海沿岸部は温暖な気候でチェリーがよく育っています。対してアトラス山脈の南は乾燥したサハラ砂漠で、ナツメヤシの実・デーツが代表的な作物です。人口は地中海沿岸部に集中していますが、石油や天然ガスなどの天然資源はサハラ砂漠に埋まっています。

アルジェリアの歴史

アルジェリアの沿岸部は、古くから文明の栄えた場所です。紀元前2〜1世紀には先住民族ベルベル人の王国ヌミディアがありました。ヌミディアはローマ帝国に征服され、ローマ崩壊後はヴァンダル王国、ビザンツ帝国の支配下に置かれました。7〜8世紀以降、アラブ人の侵入とともにイスラム教が浸透します。

中世にはザイヤーン朝などベルベル系のイスラム王朝が興りました。15世紀にはオスマン帝国の領土となります。この時代には、バルバリア海賊の本拠地として悪名を轟かせました。海賊活動は、19世紀初頭にアメリカが起こしたバーバリ戦争まで続きました。

1830年、この国の行末を決定づける出来事が起きます。フランスのシャルル10世が、国内の不満をそらすため侵攻してきたのです。侵略者はアルジェリアを自国の一部と考え、大挙して移り住みました。彼らは黒い足ピエ・ノワール(語源は軍靴の色など諸説あり)と呼ばれ住民の土地を奪い、暴力をともなう圧政を敷いたのです。

アルジェリアの近代

2つの世界大戦を経た百年後、世界中で民族自決の機運が高まります。アルジェリアも例外ではなく、7年以上に及ぶ対フランス戦争を経て、1962年に独立を果たしました。

特に泥沼化していた戦争終盤ではゲリラ戦と凄惨なテロが繰り返され、フランス兵による虐殺事件も起き、現在も両国間で問題になることがあります。独立後、ピエ・ノワールらは報復を恐れて本国に帰還しました。現在は国民の約8割がアラブ人、約2割がベルベル人と昔の姿に戻りました。

アルジェリアを知るキーワード

アルジェリアのキーワード:アルジェリア戦争

イタリア名作映画『アルジェの戦い』でも描かれた独立戦争。その犠牲者は百万人にのぼります。対フランス勝利は、今も国民の誇り。

アルジェリアのキーワード:迷路の街カスバ

首都アルジェにある、迷路のように入り組んだ街区カスバ。映画『望郷』でここに流れ着いた犯罪者ぺぺは、フランスに戻らず命を断つのです。

アルジェリアのキーワード:ムザブの谷

イスラムの教えを厳格に守るイバード派が住む地域。モスクを中心とした都市計画の合理性に、建築家ル・コルビュジエも感銘を受けました。

アルジェリアのキーワード:タッシリナジェールの岩絵

アルジェリア南東部の山地には、約1万数千年前の人々が岩に描いた絵が残っています。牛が描かれており、かつてサハラ砂漠は緑豊かだったことがわかるのです。

アルジェリアのキーワード:狙われたガスプラント

アルジェリア南部で産出する石油と天然ガスは、アルジェリア経済の大黒柱。2013年には精製施設がイスラム過激派に襲撃され、日本人を含む37人が犠牲になりました。

アルジェリアのキーワード:アルベール・カミュ

不条理の文学を追求したフランス人小説家カミュは、植民地時代のアルジェリア出身。代表作『異邦人』『ペスト』もアルジェリアが舞台です。

アルジェリアのキーワード:女性警官がいる

憲法で法の下の平等をうたうアルジェリアは、アラブ諸国のなかでは女性の社会進出が進む国。イスラム圏には珍しい女性警官もいます。

アルジェリアのキーワード:青衣の民トゥアレグ

南部のサハラ砂漠には、「青衣の民」と呼ばれる遊牧民トゥアレグが住んでいます。イスラム教徒ですが、女性ではなく男性が顔を隠す伝統があります。

アルジェリアのキーワード:ライ

民謡とポップスの影響を受けた西部オラン発祥の音楽。退廃的だとアルジェリア政府から弾圧され、音楽家が各国へ移住して世界に知られるようになりました。

アルジェリアのキーワード:バーバリーマカク

アルジェリア北部に生息するサルの仲間。かつてはヨーロッパにもいましたが、ジブラルタルを除いて絶滅しました。現在ヨーロッパに野生のサルはいません。

アルジェリアのキーワード:ご飯といえばクスクス

細かい粒状パスタ、クスクスはマグレブ(北アフリカ)諸国の主食です。アルジェリアでは、他国に比べスパイスが控えめで優しい味わいに仕上げています。

アルジェリアのキーワード:マザグラン

アルジェリア西部マザグラン要塞にいたフランス兵が、世界初のアイスコーヒー「マザグラン」を考案しました。母国で流行りませんでしたが、ポルトガルで人気です。

アルジェリアの著名人

アルジェリアの著名人:国民的歌手 ハレド

アルジェリアの音楽、ライの大御所。代表曲「ディディ」は、ヨーロッパでもヒットしました。史上最も売れたアラビア語圏の歌手とされています。(1960〜)

『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』好評発売中!

ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。

その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

記事をシェア

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー >  海外 > 中東 >

この記事に関連するタグ