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タジキスタンで独裁体制のラフモン、権力欲しいんだもん

タジキスタンが周りの国と比べ、影が薄いとの評は本当でしょうか。世界で最も標高が高い国の一つで、タジキスタンの国土の9割が山。残り1割の谷間にタジク人らが暮らしています。

タジク人はイラン系、一方中央アジアの他国は全てトルコ系です。中央アジアは外から強国が来襲した歴史を共有していますが、タジク人は同じ中央アジアに暮らすトルコ系にも攻撃された分、複雑な過去とアイデンティティーを持っています。

タジキスタンの歴史

タジク人は紀元前千年紀の半ばには、中央アジアとアフガニスタン北部に暮らしていました。遊牧的なトルコ系と比較して定住的とされます。古代からペルシャ、アレキサンダー大帝国が進出し、その後古代国家バクトリアを構成。1世紀にはインドのクシャーン朝に支配され、民族が混交したとの説があります。7世紀以降はアラブ勢力が来てイスラム化し、中世はイラン王朝、モンゴル系王朝、トルコ族に組み込まれ、19世紀にロシアに支配されました。

ソ連崩壊後のタジキスタン

20世紀のソ連時代にはソ連支配に抵抗し(バスマチ運動)気概を見せます。そしてソ連崩壊後に共産党出身の独裁者が誕生するかと思えば、そうならなりませんでした。ソ連時代に甘い汁を吸ったタジキスタンの北西部と南西部の州が権力の座に就こうとしたところ、中部・東部の民主派とイスラム主義派が共に蜂起して内戦となったのです。中央アジアで唯一の旧共産勢力との戦いです。

内戦を乗り越えたタジキスタンの現状

タジキスタンの内戦初期は、周辺国やアラブからの傭兵が参加し激しい戦闘が起こりました。ロシア軍が介入して旧共産党員のラフモノフをトップとする政権ができると、反対派はアフガンに逃れ、イスラム過激派と結びつき越境攻撃を行いました。内戦を通じ数万から十万が命を落としたといいます。

両陣営は長引く戦闘に疲弊し、ロシアとイランを含む国際社会が間に入って停戦したのは、5年が過ぎた1997年でした。そして現代、内戦を戦ったラフモノフは、「〜ノフ」というロシア風の名前を改めラフモンと名乗っています。大統領選5選中で独裁体制は盤石です。自身の子どもらは政治の要職を得ています。権力世襲を着々と整備しているかのようです。

タジキスタンを知るキーワード

タジキスタンのキーワード:ギッサール要塞

2500年前に建てられたという要塞。古くはアレキサンダー大王が、近現代ではソ連の赤軍が壊しましたが、再建されてピカピカの観光名所に。

タジキスタンのキーワード:内戦(1992〜1997)の傷痕

ソ連から独立後に、タジキスタンの豊かな西北州・西南州と、冷遇されていた東部が衝突しました。停戦したものの、国境付近などに地雷が残ってしまいました。

タジキスタンのキーワード:ホジェンドの街

タジキスタン第2の都市のランドマークは、中世イラン王朝サーマーン朝の偉大な王、イスマイル・サーマーニ像。レーニン像を倒して建てました。

タジキスタンのキーワード:ヌレークダム

堤高が約300mと世界屈指。上流にさらに大きいログンダムを建設中です。タジキスタンは、水力発電と電気を大量に使うアルミ工業が盛ん。

タジキスタンのキーワード:古代人の末裔

古代ソグド人の唯一の末裔とされる人々が、タジキスタン北西部ヤグノブ渓谷に暮らしています。ソ連時代に強制移住させられましたが、谷に戻れた人もいました。

タジキスタンのキーワード:ガラムチャシマ温泉

ゴルノ・バダフシャンの州都ホログから南へ約40km、アフガン国境近くにある秘湯。内風呂と露天風呂があり男女交代制とのこと。

タジキスタンのキーワード:パミール・ハイウェイ

どこまでも続くパミール高原を、ただ1本の道だけが貫いています。ソ連が大戦期に造った元軍用道路「M41」を、今は絶景好きのサイクリストが通っています。

タジキスタンのキーワード:ゴルノ・バダフシャン自治州

タジキスタンの国土の東部を占めています。南東部に暮らすのは、西欧人っぽい顔のパミール人。20世紀の英露による争いの末、ここはロシア領となり今に至ります。秘境ゆえ産業が育たず、東西格差が課題。

タジキスタンのキーワード:イエティ伝説

体長2m超えのUMAが、タジキスタンでも目撃されています。20世紀半ば、ソ連兵がパミールの山で遭遇し、秘密裏にモスクワへ運んだとの噂。

タジキスタンのキーワード:マルコポーロ羊

パミール高原を旅したベネチア商人マルコ・ポーロが、西洋に紹介しました。タジキスタン北東部の国立公園や、狩猟許可区に生息するハンターのあこがれの的。

タジキスタンのキーワード:パンがすごく大事

平たいパンの名前はノン。逆さまに置くのはNGです。客との食事にパンを欠かすのはNGなど、パンへの想いはいつからかパンの掟となりました。

タジキスタンのキーワード:家庭の味クルトップ

塩で固めた乳製品保存食クルトを溶かし、ちぎりパンとバターを入れて野菜を乗せた「パンのサラダ」。手早くできるので重宝されます。

『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』好評発売中!

ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。

その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

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