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明るい独裁といわれるトルクメニスタンの統治

トルクメニスタンは極端な報道規制と入国制限で国情が見えず、独裁者の面目躍如たる不思議な国家事業がどこか滑稽で謎に磨きがかかります。

9世紀頃、トルクメニスタンのこの地を含む一帯ではトルコ系部族の緩い連合体オグズが活動していました。トルクメン人の祖先をオグズ族に求める説もありますが、詳しいことはわかっていません。今のところ11世紀頃に、起源がはっきりしないトルクメン人が、他所からここに来たと考えられています。

トルクメニスタン独立までの流れ

遊牧を愛するトルクメン人は周辺国に服属したり、連合を組んだりしましたが、まとまって一つの国を作ろうとはしませんでした。そこに18世紀にロシアがカスピ海を渡り、本格的に南下しました。トルクメン人は抵抗むなしくロシアに併合されます。その後は他の中央アジアの国と同様に、ソ連の下で社会主義共和国となり、ソ連崩壊で独立し、新国家を独裁者が運営したのです。

トルクメニスタンの内政

ただ初代大統領ニヤゾフの独裁は、毛色が少し違いました。豊富な天然ガスで得た富を、自身の個人崇拝事業に注いだのです。首都アシガバートには独創的な建造物が建てられ、トルクメニスタンの国中が彼の肖像画で溢れました。教育や医療や産業は適切な投資がなされず、質が上がりませんでした。

2006年のニヤゾフの死後に就任した2代目も「趣味人」で、経済危機にあえぐトルクメニスタン国民を尻目に、首都アシガバードを総大理石張りに改良して楽しんでいます。彼は2022年に辞任しましたが、次に大統領になったのはその長男。さて長男は、親の熱い期待を裏切ることができるのでしょうか?

トルクメニスタンを知るキーワード

トルクメニスタンのキーワード:地獄の門

1971年の油田調査でガスが噴出。燃やし尽くすため火を付けたところ、今も燃え続けています。夜も明るいので、キャンプ好きに人気らしい。

トルクメニスタンのキーワード:TAPIパイプライン

トルクメニスタンは世界で5本の指に入る天然ガス埋蔵量を誇り、東部ガス田からアフガン、パキスタン、インドに延びるパイプラインをゆっくり建設中。

トルクメニスタンのキーワード:メルブ遺跡

トルクメニスタンの世界遺産。紀元前6世紀には存在した、カラクム砂漠のオアシス都市の跡。11〜12世紀のセルジューク朝で栄えるもモンゴル軍が壊しました。

トルクメニスタンのキーワード:カラ・ボガス・ゴル湾

カスピ海とは砂州で分かれている巨大な水の塊。どんどん蒸発しており、塩分濃度が高くなっています。近くで食塩などが採取されています。

トルクメニスタンのキーワード:トルクメンバシ

石油産業が集まるカスピ海沿岸の歴史ある交易都市。19世紀に建てられたカスピ海鉄道の駅舎があります。近郊にはアワザリゾートも。

トルクメニスタンのキーワード:ギョクデペの戦い

19世紀末に勇猛で名を馳せたトルクメン部族のテケ族が、帝政ロシアに抵抗した戦い。敗北によりロシア支配が決定的になりますが、教科書で必ず教える自国の一幕。

トルクメニスタンのキーワード:魂の書ルフナマ

ニヤゾフ著で人民の精神(ルフナマ)が書かれたトルクメニスタン国民必読の書。運転免許試験でも内容が出題されます。首都アシガバードに巨大ルフナマ像があります。

トルクメニスタンのキーワード:何でも知ってるぞい

トルクメニスタンでは、遊牧の知恵を蓄えた長老が尊敬の的。毛皮の帽子テルペクと長い髭がトレードマーク。いわく「水は私たちの命、馬は翼、絨毯は魂」。

トルクメニスタンのキーワード:不思議ルール

黒マスク禁止、若い男はヒゲ禁止。「ムスリムはウォッカを飲んで、自分が過激派じゃないと証明せよ」と無茶振りするのがトルクメニスタンのやり方。

トルクメニスタンのキーワード:恐竜高原

トルクメニスタン東部クギタング山脈の一角に、恐竜の足跡が多数残る場所があります。観光資源として期待されています。入国がもう少し簡単ならいいのに。

トルクメニスタンのキーワード:アハルテケ馬

トルクメニスタン原産。その毛色から黄金の馬と呼ばれています。東京の府中競馬正門前駅には、サラブレッドではなく、この馬の像があります。

トルクメニスタンのキーワード:メロン記念日

メロン大好きニヤゾフ初代大統領が言ったから、8月の第2日曜は国民の休日「メロン記念日」。歌やダンスや試食会でみんな盛り上がります。

トルクメニスタンのキーワード:みんな大好きチャル

ラクダ乳を発酵させた遊牧民伝統の国民的ドリンク。体を冷やしてくれるらしい。ボトルで売っているので、独特な酸味を体験してみて。

トルクメニスタンのキーワード:著名な首都アシガバードの不思議建築「アレム文化センター」

トルクメニスタンにある世界最大級の屋内観覧車。この他、光線が出そうな結婚式場など、大理石に覆われたアシガバートは奇抜な建築だらけ。さすがは独裁者の都です。

トルクメニスタンの著名人

トルクメニスタンの著名人:2代目大統領、独裁者 ベルディムハメドフ

初代大統領の死で副首相の身から後を継ぎました。誕生日にジェニファー・ロペスを呼ぶなど、国の金でやりたい放題。後任は長男セルダル。(1957〜)

『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』好評発売中!

ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。

その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

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