大事が外から来る島国バーレーンの宿命
古代交易国家ディルムンがあったというバーレーン。そこへ現代は、人口の半数を占める外国人労働者や開かれたビジネス環境が持ち込まれました。真珠、石油、金融と基幹産業を次々移す軽快さが、小さな島国らしい。古代にはギリシャ人が植民していました。7世紀にバーレーンはイスラム化します。住民の多数派はシーア派でした。
バーレーンの中世から独立まで
16世紀にペルシャ湾岸に進出したポルトガルは、バーレーンにも拠点を構えました。しかし17世紀にサファヴィー朝がイギリスと協力して、ペルシャ湾岸からポルトガルの勢力を一掃します。そしてバーレーンを支配下に置いたのです。
18世紀には、スンナ派のハリーファ家に率いられた遊牧民が、アラビア半島からバーレーンに侵入して征服しました。この時に少数派のスンナ派が、多数派のシーア派を支配する構造が出来上がりました。その後イギリスの保護下の時代を経て、1971年にバーレーンは独立します。
バーレーンのアラブの春
1999年に支配者となったハマドは、自らを国王と名乗り始めます(父親まではアミール・首長)。2011年には「アラブの春」がバーレーンにも飛び火し、シーア派を中心に民主化を求める運動が高まりました。この時に国王はコーズウェイを通って派遣されたサウジアラビアの軍隊を使い、運動を鎮圧しました。押さえ込まれた国民は、不満をくすぶらせ続けています。
少数派のスンナ派が、隣国サウジアラビアの支持を受けて、多数派のシーア派を支配する構図が変わっていないからです。
バーレーンを知るキーワード
バーレーンのキーワード:バーレーン要塞
16世紀にポルトガル人が建設しました。地下に古代からの何層もの遺跡が眠っています。古代海洋国家ディルムンも拠点としました。エデンの園バーレーン説など、ロマンを刺激する国です。
バーレーンのキーワード:モダ・モール
買い物客が集まる首都マナーマの名所。夏が非常に暑くショッピングは、冷房の効いた屋内が基本です。その代わり、冷房代と電気消費量は青天井。
バーレーンのキーワード:所得税0%
だから週末(アラブでは金、土曜)に派手に買い物ができます。しかしこの国を含め、消費税(付加価値税)の導入や増税が湾岸のトレンド。
バーレーンのキーワード:真珠産業
日本の養殖真珠開発まで、湾岸諸国が世界的産地でした。Fijiriは真珠ダイバーの歌で、今は文化として守られています。YouTubeで視聴できます。
バーレーンのキーワード:海水淡水化プラント
川がなく海水を真水に変えて使います。東海岸アルドゥールに、大きな水工場があります。塩分が少しだけ残るので、バーレーンの水はほんのり塩辛い水です。
バーレーンのキーワード:第一井戸
1932年、ペルシャ湾岸のアラブ諸国のなかで最初に石油を採掘しました。バーレーンの島中央部の記念すべき井戸の近くには石油博物館がありますが、閉館していることが多いです。
バーレーンのキーワード:生命の木
周囲にまったく水がない砂漠地帯に、1本だけ大木が奇跡的に生きています。樹齢400年とされ、毎年お参りに来る人も。別名はマナの木です。
バーレーンのキーワード:ドゥッラ・アル・ バーレーン
15の人工島から成る楽園で、21㎢のリゾートになる予定。資金源の1つは、利子禁止のイスラム金融を実践するクウェートの銀行です。
バーレーンのキーワード:ハワール島
隣国と領有が争われていましたが、2001年に国際司法裁判所がバーレーン帰属を言い渡します。フラミンゴやジュゴンが生息する本物の楽園。
バーレーンのキーワード:アバヤ
全身を覆う婦人服で、ヒジャブと合わせ黒色が定番。バーレーンにも保守的な部分はあり、女性の多くが着ています。もちろん着ない人もいます。
バーレーンのキーワード:国民食マクブース
湾岸諸国一帯で食べられている、スパイシーな炊き込みご飯。鶏肉やマトンや魚を乗せます。ルーミと呼ばれる乾燥レモンが味の決め手。
バーレーンのキーワード:キング・ ファハド・コーズウェイ
イスラムの戒律が厳しいサウジアラビアと、一定の鷹揚さを持つ島国バーレーンをつなぐ橋。息抜きをしたい人がサウジアラビアからよく来ます。
バーレーンのキーワード:レース大好き
馬もラクダもレースをします。中東初のF1グランプリを開催したのもバーレーンで、勝者はシャンパンでなく、ローズウォーターを撒きました。
バーレーンのキーワード:コーヒー文化と首都マナーマのカフェ
週末になると地元民がコーヒーを飲み、ゴシップ交換をするために集まります。コーヒーにカルダモンやサフランが加えられていて、味がスパイシー。
バーレーンの著名人
バーレーンの著名人:初代マリク ハマド国王
マリクとは国王のこと。フルネームは、ハマド・ビン・イーサ・アル・ハリーファ。ゴルフやテニスや馬術が趣味のスポーツ愛好家。(1950〜)
『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』好評発売中!
ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。
その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載
好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。
掲載している国・地域
イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア
【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)
福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。
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