アフガニスタンの平和ってなんだっけ?
アフガニスタンは、多民族国家です。アフガニスタン北東部のパシュトゥーン人が多数派ですが、全人口の半分以下、他にタジク人やウズベク人がいます。アフガニスタンでは古来いくつもの王朝が現れ、インドを襲ったゴールや、ムガル帝国を建てたバーブルが知られています。これらはアフガニスタン生まれですが、民族はトルコ系。パシュトゥーン人のドゥラーニー朝ができたのは18世紀です。しかし後継王朝の頃、イギリスとソ連が中央アジアで覇権争いを始めたのです。
イギリスはアフガニスタンに、19世紀半ばから20世紀初頭に三度の戦争を仕掛けました。アフガニスタンはよく戦いました。第一次はアフガニスタン勝利、第二次は激しく抵抗するも王が負けを認め、イギリス保護下に入りました。第三次ではイギリスに勝ち、1919年に独立を果たしました。
タリバンが登場するまでの歴史の流れ
アフガニスタンは近代化の過程でソ連から軍事援助を受け入れると、ソ連留学帰りの将校たちが軍を掌握しました。その結果1973年に共和制となり、次に1978年に共産政権が誕生したのです。しかし女性の権利の拡大や農地改革などの政策に国民が反発し内戦となります。
アフガニスタンの共産政権を守るために1979年にソ連軍が介入しましたが、8年後に撤退すると共産政権は崩壊しました。そして今度はその政権と戦った勢力同士が戦い始めます。これに勝ったのが、パキスタンの支援を受けたイスラム主義組織タリバンだったのです。
タリバン政権が復活したアフガニスタン
イスラム主義のタリバンは、欧米から嫌われテロ組織とされました。そして2001年にアメリカ同時多発テロが発生すると、テロリストを匿っているとしたアメリカが侵攻し、即座にタリバンを叩き潰したのです。
その後、欧米主導で暫定政権ができるもタリバンの抵抗が続き、民主主義的な選挙も伝統に合わず混乱します。2021年にアメリカ軍が撤退すると、タリバン政権が20年振りに復活しました。この間アフガン国民全員が、戦争しか知らない世代となったのです。
アフガニスタンを知るキーワード
アフガニスタンのキーワード:タリバン政権
2021年のアフガニスタンからの米軍撤退で20年ぶりに復活しました。報道官は、昔と違い軟化したとアピールしますが、女性の権利に質問が及ぶと歯切れが悪くなりました。
アフガニスタンのキーワード:バーミヤン石窟
3〜5世紀にアフガニスタンのバーミヤン渓谷で、仏教寺院や石窟が建造されました。何世紀も人々を見守った大仏は、2001年にタリバンが爆破したのでもうありません。
アフガニスタンのキーワード:ブルーモスク
アフガニスタン北部マザーリシャリーフ市の名所。13世紀にモンゴルが壊しましたが、再建されました。4代正統カリフのアリーを祀っているシーア派の聖地です。
アフガニスタンのキーワード:ラピスラズリ
アフガニスタン北東部バタフシャーンのサリ・サング地方で、昔から採れたアフガニスタンの名産。アフガニスタン経済が破綻しているので、通貨の代わりに使われることも。
アフガニスタンのキーワード:ワハーン回廊
19〜20世紀に英露がアフガニスタンをめぐり争った末、両国の緩衝地帯として作られた細長い地域。今は、ワハン人の農民がのんびり暮らしています。
アフガニスタンのキーワード:ケシ栽培
アフガニスタン南部カンダハールが有名。アフガニスタンの国は、一大産地でタリバンの資金源でした。栽培が容易で手を出すと止められず、真面目な野菜農家が激減しています。
アフガニスタンのキーワード:国民食 カブーリ・プラオ
カブール風ピラフ。具はマトン、ニンジン、レーズンなど。味付けにはニンニクやクミンを使っています。この料理で意中の相手の胃袋をつかむのです。
アフガニスタンのキーワード:ブズカシ
馬に乗ってヤギを奪い合うアフガニスタンの国技。2020年にアフガニスタン西部ヘラートで6年ぶりに開催され、盛り上がりました。昔のタリバンは禁止しましたが、現政権は許可しています。
アフガニスタンのキーワード:アフガンハウンド
エジプト原産との説もありますが、どうやらアフガニスタン原産らしい長毛が自慢の犬。19世紀後半にイギリス兵がアフガニスタンから欧州に持ち帰り、流行りました。
アフガニスタンのキーワード:ヌーリスターン人
多民族国家アフガ二スタンの少数民族の1つ。アフガニスタン北東部に暮らし、瞳と肌の色が明るいのが特徴です。ムスリムですが土着の古い信仰も守っています。
アフガニスタンのキーワード:バローチ人
アフガニスタン南西部に暮らす少数民族。南のパキスタンのバローチスターン州でも多く暮らしています。同国内では権益を拡大する中国人へのテロが起こっています。今も独立運動が続いています。
アフガニスタンの著名人
アフガニスタンの著名なパンジシールの獅子:マスード将軍
名前はアフマド・シャー・マスード。タリバンに抵抗した北部同盟(元ムジャヒディン)の英雄です。暗殺されましたが、息子が遺志を継いでいます。(1953〜2001)
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その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載
好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。
掲載している国・地域
イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア
【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)
福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。
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